読者の声

2013年11月号 連載

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福島では自らを鼓舞するような明るい笑顔をよく目にする。原発事故で避難を経験した女性もそうだった。

今、各地で原発再稼働にむけた安全審査が進んでいる。そこで避けて通れないのが住民の避難政策だ。災害弱者と異なり避難弱者は人が作りだす。自力で避難できない多数の患者や介護施設の利用者を安全にどう避難させるのか。これまで起こらないとされてきた原発事故は、事故時における避難政策の脆弱さを露呈させたが、対策は遅々として進んでいない。各地の地域防災計画を開くと、病院や介護施設では避難計画を独自設計、立案することになっており、イザという時の誘導も任されたまま。実効性のある計画とはいえまい。事故の調査と提言をまとめた国会事故調報告書も国会で議論されていない。

「教訓さえも生かされないのかと思うと救いがない」。被災からこれまでを語った後、彼女の表情が曇った。2年半経った今、この言葉は重い。避難だけではない。汚染水問題、除染、仮設住宅――。問題は山積している。時間は残されていない。

フリージャーナリスト 相川祐里奈

   

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