三村次期東商会頭の頭痛の種「中村専務理事」

2013年10月号 DEEP

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会員数7万6千を誇る東京商工会議所(岡村正会頭=東芝相談役)が前代未聞の内紛に揺れている。64年の歴史を持つ傘下の会員交流団体「東商女性会」の副会長、常務理事ら10人が揃って辞任し、今秋には会長も退任する。組織が空中分解しかねない。背景には、吉川稲会長(「吉香」社長)と、後釜を狙う井上象英・筆頭副会長(「神宮館高島暦」の著者)の対立があり、井上派の役員が集団辞任による、事実上のクーデターを仕掛けたのは昨年7月のことだった。

吉川会長は、故・佐藤栄作元首相の秘書を経て人材派遣会社を設立。女性会活動歴は30年に及ぶ、弁の立つ気丈な経営者。井上派は「吉川会長の独断専行に不満を募らせていた」(東商元役員)。とはいえ、次期会長の指名権は現会長にあり、吉川会長を引きずり降ろさない限り、井上氏に会長栄進の目はない。

女のパワーゲームは、よく聞くハナシで驚くに値しないが、あろうことか「毎年2百万円の補助金を出していることを理由に、東商事務局が人事介入してきたのです」(吉川派の役員)。

昨年7月11日。吉川会長は、中村利雄専務理事(67)ら5人の東商幹部の呼び出しを受け、「10人以上が辞表を出した。会長にも責任があるのでは」と、詰め寄られた。吉川氏は辞任届を出した役員の名前と理由を明かすように求めたが拒否され、一方的に責められたという。井上派の肩を持つ事務局のやり方に猛反発した吉川氏は、岡村会頭の仲裁も受け入れず、昨秋以降、女性会は休止状態に陥った。

そして、事務局と吉川会長の泥仕合が露見したのは今年6月。事務局が正副会頭企業に説明した女性会運営の現状は事実を捻じ曲げているとして、吉川会長が32ページに及ぶ反論書を会員企業に大量に送付したからだ。これを読んだ副会頭企業の役員は「専務理事はいわば東商の社長。男性幹部5人で女性一人を取り囲んで責めるなんて常識では考えられない」と言う。

物議を醸したのは、中村専務の尊大さである。吉川氏は反論書の中で、「女性会なんか解散すりゃいいんだよ」「会長なんて、誰がやったって良いんだよ」と、中村氏から暴言を吐かれたと告発している。

中村氏は元中小企業庁長官で、07年に東商に天下った。経産キャリアには珍しい名古屋大卒業で、愛知万博事務総長を務めた後、愛知県知事選への出馬が取り沙汰された。東商入りした後も、全国の商工会議所をバックに国政出馬を狙っていたとされ、「上昇志向が強く、何でも仕切りたがるタイプ」(経産省OB)。政界に顔が利く吉川会長を小賢(こざか)しく思ったようだ。

「歴代天下りの専務理事は、プロパー職員の神輿(みこし)に乗り、あまり口を出さないものだが、中村氏は違った。岡村会頭が体調を壊して1年以上休んだため、中村専務が人事権を握り、何でも決めるようになった」(東商幹部)。「経産省時代も好き嫌いが激しく、人前で部下をケチョンケチョンに叱る怖い人」(経産省の後輩)。常務理事以下のプロパーは、中村専務の強権にひれ伏すようになり、その驕(おご)りが、内紛を収拾不能にした。

11月1日、新会頭に新日鉄住金相談役の三村明夫氏が就任する。「裸の王様」と化した中村専務は頭痛の種になりかねない。「来春の経産省人事に合わせて更迭だろう」(東商幹部)

   

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