2013年10月号
連載
by 宮
9月11日。東電福島復興本社のあるJヴィレッジ会見室。汚染水・タンク対策の責任者として福島常駐となった相澤善吾副社長(61)が語る。「1F(福島第一原発)の現場は、事故から2年半が経った今も『野戦病院』さながらの状況です。突発的に起こる様々なトラブルに、いわば火事場の対応、急場しのぎではなく、今後40年間に及ぶ廃炉作業を安定的に続けていける現場へと、何としてでも変えていかなければ」
一方、記者から「東京五輪の実現を、一番喜んでいるのは1Fの皆さんとご家族では?」と問われた小野明所長(54)は「正直言ってほっとしました。まさか汚染水問題が、オリンピックにまで影響するとは想像もしなかった。どんどん盛りあがってしまい、ある意味、変なプレッシャーがかかっていました」と答えた。
小野氏は、生前の吉田所長が「いずれ君に頼む」と後を託すほどの逸材だ。一昨年12月に福島に呼び戻され、この6月に所長に就任した。今も緊急時体制が続く1Fの防災管理者には夜間の待機義務があり、小野氏は副所長らと交代で週に3回、月に12~13回、免振重要棟内で仮泊する。「風呂がないのが一番の悩み」(2連泊のみシャワー使用可)と話す。単身赴任の「新広野寮」はJヴィレッジに隣接する4畳1間、シャワーとトイレは共同のプレハブ仮設だ。
9月3日、政府は「(汚染水対策を)東電任せにせず、国が前面に出る。逐次的な事後対応ではなく、リスクを洗い出し、予防的かつ重層的に、抜本策を講じる」という方針を決めた。東電本社幹部は「五輪が東京に決まり首の皮一枚。無力感、徒労感に襲われそうになることもしばしばですが、窮すれば変ず、変ずれば通ず。何とか踏ん張り、凌いでいきます」と、2020年の光を見つめるようだ。
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