2013年8月号 POLITICS [ポリティクス・インサイド]
毎日新聞は来年4月からの消費税増税対策として、年内にも有料電子版(電子新聞)の創刊に踏み切る方針を固めた。新聞協会は政府・与党に対し「軽減税率」の適用を求めているが、実現の見通しは立っていない。このため3%の増税分の新聞料金への転嫁は避けられないとの前提に立ち、読者離れを防ぐ手段として電子版を活用することにした。
電子版では既に日経新聞が「日経電子版」(単独で月額4000円)、朝日新聞が「朝日新聞デジタル」(同3800円)、読売新聞が「読売プレミアム」(同157円)を創刊している。このうち読売プレミアムは「紙」の読者への「付加サービス」という位置づけで、場合によっては販売店の裁量で「おまけ」として無料で提供することも検討している。
毎日は2012年5月に、写真などビジュアル中心の独自色を売りにしたデジタルニュースサービス「T AP‒i(タップ・アイ)」(同900円)をスタートさせた。媒体をスマートフォンとタブレットに限定して20~30代をターゲットにしたが、写真や動画が中心のためデータ量が大きく、ダウンロードに時間がかかるという欠点を克服しきれなかった。目下のところ、読者数すら公表できない惨憺たる状況にある。
今回の毎日の電子版は、「紙」から電子版への移行を狙う日経・朝日型ではなく、読売型を目指す。速報などのニュースが中心で、料金は読売プレミアム程度に抑え、「紙」の読者を維持するための「おまけ」として活用することを想定しているという。
課題は短期間にシステムをどう構築するかだ。TAP‒iやTポイントなど既存のデジタルサービスと統合するとなると、膨大な資金と時間が要る。一方、加盟している共同通信の課金システムなどを使えば、コストは安く済むが、既存システムとの統合は難しくなる。悩ましいところだ。
また、無料のニュースサイトである「毎日jp」との関係をどうするかも頭が痛い問題。「おまけ」としてもコンテンツ的にそれなりのお得感がなければならないし、毎日jpとの差別化も必要となる。このため読売プレミアムのように、提携施設やイベントの入場割引、チケットの優先受け付けなどの特典を用意する可能性もある。
経営難で資金面や人材面などさまざまな制約がある中で、どのような創意工夫を凝らして電子版を創刊するのか。毎日にとってまさに踏ん張りどころと言えそうだ。