編集後記

2013年5月号 連載
by 宮

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某夜の池袋演芸場。「疑いの心があると何から何まで疑わしく恐ろしく感じてしまうこと、なあんだ?」。たわいもない四文字熟語の謎かけ。オチがネズミの停電、ダダ漏れ汚染水の「東京電力」とは、とても笑えなかった。

トラブル続出のイチエフ(福島第一原発)は信用不安を起こした銀行のようなもの。社長をどやしつけても信用は回復しない。むしろ、いま問われるのはイチエフを監視する国(原子力規制庁)の在り方。過酷な廃炉作業を「東電任せ」にしてきた。

我が国には22の原子力施設があり、安全確保の要として約110人の原子力保安検査官が常駐している。ところが、その配置には、保安院時代に定めた「金科玉条」のルールがあり、「原子炉の数+2(所長、副所長)」が原則だ。驚くなかれ。巨大な汚染水処理工場と化したイチエフに常駐する要員はわずか8名。東海・大洗14名、柏崎・刈羽9名より少なく、浜岡や六ケ所と同じ人数になっている。イチエフは、世界を震撼させた「レベル7」の海洋汚染型事故。たった8名で監視せよとは常軌を逸している。なぜ、他の原発からヒトを回さないのか?「そんなことをしたら(検査官を剥がされた)立地自治体や住民が黙っていない」(規制庁幹部)。事なかれ主義の役人根性丸出しである。

2年前の3月14日、イチエフの検査官7人全員が大臣命令に背き、事故現場を放り出して、福島市に逃げ去った。その「原罪」を引きずる旧態組織に、イチエフの見守りは土台無理な相談かもしれない。政府と東電が連帯責任を負う新たな監視体制を構築しない限り、信用不安は消えないだろう。

本誌も満7周年を迎えました。創刊からのご愛読は約3千人。発行部数は7倍に。よちよち歩きの赤ん坊をピカピカの一年生に育ててくださった皆さまに、心より御礼申し上げます。中学生になれますように——。

   

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