編集後記

2012年9月号 連載
by 宮

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原子力規制委員会の国会同意人事が惨憺たることになっている。委員長候補の田中俊一氏は原子力委員会の委員長代理を務めた人物。よりによって「原子力ムラの村長」に白羽の矢を立てるとは、と罵声を浴びている。

政府・民主党は8月下旬の衆院本会議で採決を強行する構えだが、党議拘束をかけても数十人が反対に回るのだろう。通常なら議場で起立して賛否を確認するが(議席数は数えない)、自民党は記名採決を求め、民主党の造反議員の多さを際立たせようとしている。

「昨年末の『原発事故収束宣言』に続き、細野君(原発担当大臣)はしくじった。3・11後の日本を託す規制委のトップは、原子力ムラから決別しなければ。政府から独立した3条機関となる新規制組織にふさわしい人物を迎えないと、国民は納得しない」(民主党の閣僚経験者)

細野大臣自身が、除染活動に汗を流す福島市出身の田中氏に惚れ込んでしまったようだが、残りの4委員の選考過程も不透明だ。「全体で数十名をリストアップして、地震で一定名、放射線防護で一定名、原子炉で一定名と、それぞれ差がありますが、分野ごとに絞り込みました」(細野氏)というから、ありきたりの審議会人事と変わらず、役人が準備した候補者リストの中から適当に選んだのだろう。

「国民の思いに応えるなら、事故原因を究明した国会、政府の事故調委員長を務めた黒川(清)、畑村(洋太郎)両先生を引っ張り出す手もあった。政府任せで、国会は機能していない」(民主党の荒井聰衆院議員)

規制委人事について、岡田克也副総理は「私は了承しておりますが(閣議で)議論したことはありません。(細野大臣に)一任したというか、異論は挟まなかった」と言い、野田首相は「経歴には問題ないと聞いていた」と、まるで他人事だ。民主党政権の未熟さは如何ともしがたい。

   

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