自民党は若手が変える  「政策グループ」旗揚げ

西村康稔 氏
自民党衆議院議員・影の内閣「財務大臣」

2012年9月号 POLITICS [インタビュー]
インタビュアー 本誌 宮嶋巌

  • はてなブックマークに追加
西村康稔

西村康稔(にしむら やすとし)

自民党衆議院議員・影の内閣「財務大臣」

1962年兵庫県生まれ(49歳)。灘高、東大法学部卒業。通商産業省入省。米メリーランド大学院卒業。2003年衆院初当選(現在3期目)。若手改革派のリーダーとして活躍。09年秋に47歳の若さで自民党総裁選に立候補するも落選。東大時代はボクシング部(9勝2敗)。

写真/吉川信之

――野田首相が「近いうちに国民に信を問う」ことを約束し、消費増税法案が成立しました。

西村 鳩山元首相が「野田政権は国民の信を失っている」と発言するなど、民主党の足元はさらに液状化し、参院第一党の座から転げ落ちそうです。もはや政権の体をなしていません。3年前に下野した時には10年間は政権に復帰できないと覚悟しましたが、民主党がこんなに早くぶっ壊れるとは想像もしませんでした。

10月臨時国会で話し合い解散か

――民主党政権の最大の過ちは?

西村 民主党は政権運営の経験がないのに、官僚はすべて「悪」と決めつけ、「政治主導」の名のもとに官僚を使おうとしなかった。十分な情報が集まらない段階で、また判断する専門知識も経験もないのに原発事故の現場に介入した「菅災」は、その最たるものでした。「偽りの政治主導」です。

――衆院解散の時期が焦点ですね。

西村 早ければ9月8日の今国会会期末との観測もありますが、民主党内の反発はキツイでしょう。谷垣総裁には、何がなんでもこの国会中に解散に追い込んでもらいたいです。

――野田・谷垣の密約はありますか。

西村 皆目わかりませんが、解散・総選挙を打つ前に民主党は赤字国債発行法案の成立を言ってくるでしょう。会期末は再び緊迫すると思いますが、結局、時間切れで民主党代表選、自民党総裁選になだれ込む。その後で開かれる秋の臨時国会で、赤字国債法案を成立させた後、事実上の話し合い解散になる可能性が高いとみています。補正予算まではとても無理です。

――仮に10~11月に解散になったら、自民党は総選挙に勝てますか。

西村 選挙区では現職も落選組も頑張っていますから、議席を大きく伸ばすと思いますが、比例区でも「自民党」と書いてもらえるかといえば、そこまで信頼が回復したとは思えません。比例区では「反増税、脱原発」を声高に唱える生活党や第三極のポピュリズムに票が流れる可能性があります。

――自民党内には単独過半数で政権復帰を期待する向きもあります。

西村 甘すぎます。自公合わせても過半数確保は厳しいと考えた方がいい。自民党単独で200議席に届くかどうか。私は3年前の総裁選に挑んだ後、過去のしがらみにとらわれず、新しい自民党を創るため無派閥の若手議員約20人を結集し、政策グループ「新世紀」を立ち上げました。自民党はもっと若手が前面に出て活躍しないと、世の中から「変わった!」と認めてもらえません。

――消費増税に賛成する自民党は、野党らしさが見えにくくなっています。

西村 我が国の借金は1千兆円にもなり、GDP比で219%と、あのギリシャ181%、スペイン77%よりもひどい。1400兆円もの国民貯蓄があるため、これまで国債の発行・消化に問題はなかったが、経済成長の鈍化もあり、国内で消化できる期間はあと2~3年しかない。外資系ファンドなどは虎視眈々と日本売りを仕掛けるタイミングを狙っており、先送りはできません。ヨーロッパを教訓とした対応が急務なのです。とはいえ、バラマキ型の分配政策に向かう民主党に対して、自民党は経済成長でパイを増やし、努力した人が報われる躍動感ある成熟社会を目指しています。民主党との違いを、しっかりアピールすべきですね。

――8月7日に、政策勉強会「経済活力・雇用創出研究会」の初会合を、永田町の党本部で開きましたね。

西村 円高・デフレ・空洞化を克服し、雇用を創出するために何をすべきか。宇宙、海洋、環境・エネルギー、再生医療、医療機器などのニューフロンティアへの挑戦、思い切った規制緩和と特区の活用などが必要です。特に疲弊する地域再生が急務です。増税だけでは財政再建もできません。大胆な金融緩和による緩やかなインフレ(名目成長率2%)と経済成長を実現し、税収増による財政安定を図ります。もちろん、更なる歳出削減、特に国・地方を通じた公務員人件費の削減と国会議員の定数削減を断行すべきです。思いを同じくする中堅・若手議員に呼びかけ、梶山弘志さん、石田真敏さんら25人の先生方に集まってもらいました。週1回程度の勉強会を開き、半年から1年後に提言をまとめたい。

総選挙後に「安定政権」をつくる!

――総裁選に再挑戦しますか。

西村 谷垣総裁と中堅・若手代表の一騎打ちになるなら割り込むことはありません。もし、誰も出なかったり、乱立した場合は、やるかもしれない。 ――大阪維新の会をどう見ますか。

西村 橋下さんの桁外れのパワーは関西に住んでいなければわかりません。彼は極端な主張をしたり、手法も強引であったりするが、古いシステムを壊し、日本を改革していこうとする姿勢は共感できます。小異を捨てて、日本の将来のために結集することが必要な時です。維新の会の根っこは自民党であり、維新のパワーを自民党改革に取り込みたいぐらいです。

5月の連休に米国シアトルにビル・ゲイツ氏を訪ね、日本政府との連携・協力の枠組みについて話し合った折、「日本はどうなっているの。何も決まらないね」と聞かれました。総理大臣がコロコロと変わる日本は、誰と話をしたらよいかわからないと、海外要人から見られているのです。

恐らく年内に行われる衆院選と来年7月の参院選を経て、衆参ともに過半数を持つ安定政権を作らないと日本は窮地に陥るでしょう。仮に衆院選で自公が過半数を握っても参院は過半数に満たない。総選挙後は政界再編が必至なのです。単なる数合わせの談合であってはならないが、政策と志を共有できる勢力が結集するチャンスです。

   

  • はてなブックマークに追加