編集後記

2012年8月号 連載
by 宮

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7月5日、参院議員会館で国会事故調の記者会見。「福島原発事故は終わっていない」と書き起こし、「この事故が『人災』であることは明らかで、歴代及び当時の政府、規制当局、そして事業者である東京電力による、人々の命と社会を守るという責任感の欠如があった」と断じた。

吉田所長の証言が生々しい。「指揮命令系統がムチャクチャなんですよ。官邸にいた武黒(フェロー=元副社長)から電話がかかってきて、『おまえ、海水注入は』、『やっていますよ』と言うと『えっ、やってんのか』と。『止めろ』と言うので『何でですか』と。『おまえ、うるせえ。官邸が、もうグジグジ言ってんだよ』。俺は止めないよと言ったんだけど、官邸が言っているからしょうがねえだろうとかいう話になったんです……」

背筋も凍る、夏の夜のお勧め「ホラー」(しかも実話)だ。本文は大著だが、別にダイジェスト版と要約版があり、それぞれ20分、1時間ほどで読める(事故調HPからダウンロード)。

解せないのは、報告書を受け取った国会の対応だ。みんなの党が、黒川清委員長を参考人として参院予算委員会に招致しようとしたが、自民党が拒否権を発動。お流れになった。「衆参両院において全会一致で議決され、憲政史上初めて誕生した独立調査委員会から話を聞くのは当然です」と、みんなの党の水野賢一参院国対委員長は憤慨する。

報告書は「規制当局に対する国会の監視」「政府の危機管理体制の見直し」など7つの提言を掲げ、その実行を立法府に迫っている。自民党は「呼ぶ必要はない」と言うばかりで理由を明らかにしない。「委員の中に『反原発の闘士』がいるため、再稼働阻止の論陣を張られたくない」というのがホンネのようだ。報告書には、50年にわたる一党支配がもたらした「おごり、慢心」を突くくだりもある。

   

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