ローソン「夢を応援基金」

被災地から「1097のありがとう!」

2012年4月号 INFORMATION
取材・構成/本誌 和田紀央

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大手コンビニエンスストアのローソンが震災の影響で就学が困難になった若者たちに毎月3万円(最長7年・返済不要)の奨学金を支給。復興を願う「元気になろう!日本」プロジェクトが感動を呼ぶ。

「夢を応援基金」のスペシャル講演で奨学生たちを勇気づける新浪社長

「津波で自宅を流され、仮設で生活しています。前に進める希望を与えて下さった皆様に感謝しています」(高校1年生)

「進学できなかった私が進学することができました。夢である助産師になるため、そして復興のために頑張ります。本当に有難うございました」(高校3年生)

ローソンの新浪剛史社長は、震災翌月の昨年4月、復興を願う「元気になろう!日本」プロジェクトを立ち上げ、その目玉として若者たちの修学支援を目的とした「夢を応援基金」の創設を発表した。

「ローソンは、たくさんの若者のアルバイトで支えられています。だから今こそ、震災の影響で就学が困難になった若者たちを応援したい。そんな思いから、社会に役立つ知識や技術を身に付けたいと考えている生徒さんたちを対象に『夢を応援基金』を創ったのです」(新浪社長)

奨学金から漏れた生徒に思いやり

夢を応援基金の対象エリアは、特に被害が大きかった岩手・宮城・福島各県で被災した生徒たち。その特徴は、奨学金の返済の義務がなく、1人につき毎月3万円を給付。対象となる裾野は広く1097名。しかも、生徒たちが社会に出るまで最長7年間も支援を継続する。被災地の実情に即し、高等学校や大学・短期大学だけでなく、高等専門学校・高等専修学校・専門学校で専門技術を学ぶ生徒たちも支援することは、特筆に値する。「奨学金だけでなく、メンタルケアやローソン店舗へのアルバイト紹介などの様々なサポートをしていきます」と、ローソン執行役員の宮崎純さんは語る。

「夢を応援基金」ホームページ

店頭の募金箱

同基金はローソンからの拠出金(4億円)に加え、グループ役職員・加盟店オーナーさん・店長さん・クルーさんからの募金、全国1万店のローソン店舗での募金活動、Pontaポイントカードからの寄付金、お取引さまからの募金などにより運営されている。「おにぎり売上高」の一部が寄付される募金付き商品の販売なども行い、募金総額は8月末までに2億7千万円に達した。その後も「ガムを噛んで若者の夢を応援!」と銘打ち、ロッテの対象ガムを買うと1個につき10円が寄付されるなど支援の輪が広がった。

奨学生1000名の募集に対して2400名の応募があり、外部の有識者による厳正な審査の結果、被災状況や経済的困窮の高い生徒たち1097人を選考し、昨年10月から奨学金の支給を開始した。ここでも心強いサポーターが現れた。被災地の金融機関である岩手銀行、七十七銀行、東邦銀行が、奨学金の銀行振込手数料やインターネットバンキング手数料を免除するなど、全面的に協力してくれたのだ。

夢を見る力は、日本の力になる

冒頭の感謝の言葉は、奨学生に選ばれた生徒たちの歓びの声であり、ローソンのホームページ(「1097のありがとう」)で読むことができる。なお、今回選考から漏れた1292名の生徒にも、一時支援金3万円と全国のローソンで使えるプリペイドカード6千円分が贈られた。そうした配慮は被災地の若者たちに寄り添うものだ。

2月19日、奨学生と被災3県の高校生約700人を招いて「夢を応援基金“スペシャル講演&ライブ2012”」が、仙台市内で開かれた。前半のトークセッション「夢をかなえる学生生活」のステージに登場したのは、著名な音楽プロデューサーの小林武史さんと「ハナミズキ」などのヒット曲で知られる一青窈さん、そして同基金の生みの親であるローソンの新浪社長と玉塚元一副社長の4人。被災3県の21カ所から無料送迎バスで集まった奨学生たちと向き合い、彼らと同じ年代をどのように過ごし、何を悩み、どのような夢を描いたかを打ち明け、一緒に将来について考え、語り合った。

「社長として決断する時、不安はないか」と問われた新浪社長は「実は常に不安です」とホンネで答え、「でも不安そうな顔をしたら皆が不安になるから、部下には自信を持って伝える。不安は神様がくれた試練。乗り越えればきっと楽しくなる」と、奨学生たちを勇気づけた。

デビューするまでさまざまな挫折を経験したという一青さんは「本当に大変なことは自分にしかわからないと思っちゃったり、素敵な話を聞いても心に響かない瞬間もあると思う。そんな時は手紙を書いてください。お返事を書きます」と、心温まるメッセージを送った。一青さんは後半のライブで、小林さんの奏でるピアノに合わせて、中島みゆきさんの名曲「時代」や「ハナミズキ」を熱唱し、大きな拍手に包まれた。

「未来へ。夢見る力は、絶対、日本の力になる」という、「夢を応援基金」のキャッチフレーズが筆者の胸に響き、ローソン店頭で「鉛筆のマーク」が可愛い募金箱を応援したくなった。

   

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