2012年3月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
野村ホールディングスによる米リーマン・ブラザーズの欧州部門買収が自己矛盾に陥っている。野村のホールセール部門を統括するジャスジット・バタール副社長が1月に退任、その直後に腹心のタルン・ジョトワニ専務も辞めていたことがわかった。
バタール氏は旧リーマンのアジア太平洋部門トップで野村に移籍し、昨年、ホールセール部門CEOに昇格したばかりだったが、氏が率いる海外を中心とするホールセールの不振は野村本体の赤字転落を招き、米格付け会社ムーディーズが格付け見直しを始める契機となった。野村は「辞任」を強調するが、事実上の解任だった。
伏線は昨年11月にあった。バタール氏はリーマンが得意とした債券で利益を稼ぐ方針を示し、自己勘定でイタリア国債を購入する計画を本社に提案したとされる。海外事業の赤字を一気に挽回するこの提案を野村本社は却下、双方に軋轢が生じたという。バタール氏の後任選びは難航しており、現在、グループCOOの柴田拓美氏が職務を代行している状態だ。野村はリーマン買収の効果を強調する一方で、欧州では強烈なコスト削減を進めている。バタール解任はリーマン切りの象徴となり、その買収が失敗に終わったことを印象づける結果となった。