編集者の声・某月風紋

2011年10月号 連載
by 宮

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そぼ降る雨の土曜日。飯舘村に隣接し、計画的避難を余儀なくされた山木屋地区(川俣町)の人たちが集団移住した町営グラウンド「農村広場」を訪ねる。

160戸の仮設が建ち並び、屋根まで伸びた朝顔が風にそよぐ。ここで暮らす約360人の平均年齢は72歳。自治会長の廣野太さん(61)は「一番困るのは何もすることがないことです。老人は体を動かさないと体調を壊す。除染はいつはじまるのか。うちに帰るのが、どれほど困難か、よくわかった」と話す。

行き交うクルマはなく、浪江町に入る。原発から28キロ地点に赤ランプの検問所。アスファルト上でさえ毎時6マイクロシーベルト(μSv)を示す。警察官も外には立たず、車内から注意を促す。草ぼうぼうの脇道を入ったところにある津島中学校は10μSvを超える汚染ゾーンだ。

野田首相は就任会見で「除染が大きな課題。省庁の壁を乗り越えて実施する。福島の再生なくして日本の再生はない!」と泣かせるせりふを吐いた(56頁参照)。

「問題は除染作業で生じる汚染残土をどこに置くか。それが決まらない限り、除染が全く進まない」(飯舘村の菅野村長)という地元の訴えが届いたか、細野原発事故担当相が動き出し、「(自治体の意向を踏まえ)仮置き場の設置場所として国有林を検討する」と表明した。ところが、所管する鹿野農水相からは「応答」発言なし。林野庁に取材すると「具体的な検討はしていない」と冷ややかだった。

菅野村長は広報『いいたて』8月号に「村内の国有林などの中に仮置きするということで国の除染事業を大幅に入れたい」と述べているのに、農水省はまるでそっぽを向いている。これでは除染作業は一歩も進まない。

折しも、福島県庁の目と鼻の先、渡利地区でホットスポット(毎時5.4μSv)が見つかり、特定避難勧奨地点に指定される可能性が高まった。線量の低い地区に住む母親は呻(うめ)く。「福島育ちというだけで、小学生の娘が将来、結婚差別にあったら申し訳ない。越せるものなら引っ越したい」 

   

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