海外投資家が敬遠する大手生保の高コスト体質

2010年8月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]

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日本生命が基金の海外調達を断念したことが話題を集めている。頓挫したのは7月初旬。関係者はギリシャ・ショックによる欧米市況の乱れなどを理由に挙げるが、日生をめぐっては、米大手格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が7月7日に保険財務力とカウンターパーティの格付けのアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更したばかり。日本の生保ビジネスそのものに対する海外投資家の評価が下がり始めた証拠だ。

日生は自己資本に相当する基金を総額1兆1千億円規模に増強するため、今夏にも500億円を国内外から調達する計画だった。来年以降、本格化する保険会社の自己資本の「質」と「量」の規制強化に対応するとともに、調達資金を海外での戦略投資に充てる計画だった。

ところが、金融危機の深刻化が懸念される欧米で、日生に金を出そうという投資家は「それほど多くなかった」(欧州金融機関幹部)。S&Pが「収益力の低下や資産運用環境の低迷を考慮すると、自己資本水準の強化は以前ほど容易ではない」と酷評するのと相前後するように、日生は国内調達一本槍に切り替えた。

他の大手生保にとっても対岸の火事では済まされない。4月に上場を果たした第一生命保険は、初値16万円の株価が12万円割れ。S&Pが指摘した「収益力の低下」とは、すなわち「生保レディに依存した採算の悪い営業体制」にほかならず、業界全体が抱える構造的な問題だ。

折しも08年には生保界の異端児とされるインターネット専業のライフネット生命保険が「付加保険料率の開示」を開始。大手生保の営業コストの高さ、契約者負担の多額さは消費者にも機関投資家にも一目瞭然になってしまった。GNP(義理、人情、プレゼント)頼みの生保レディ営業を改めない限り、収益力の向上は困難であり、海外投資家の関心は遠のくばかりだろう。

   

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