「ゆうパック」遅配招いた斎藤日本郵政社長の瀬戸際

2010年8月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]

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日本郵政グループの郵便事業会社(日本郵便)による宅配便「ゆうパック」で32万個の遅配が発生していたことが7月5日に発覚した。日本郵便は日本通運との共同出資会社JPエクスプレス(JPEX)が手がけていた「ペリカン便」事業を7月1日付で吸収したが、統合に伴う作業ミスが相次ぎ、運送ダイヤが混乱。トラブル発生の公表が遅れたことも騒ぎを大きくした。

批判の矢面に立ったのは、昨年11月に日本郵便社長に就任したばかりの鍋倉眞一(64)氏。旧郵政省OB(元総務審議官)の鍋倉氏を社長に起用したのは、日本郵政の斎藤次郎社長(74)にほかならない。

昨年の政権交代により、小沢一郎・民主党前幹事長と亀井静香・国民新党代表の後押しで復権、日本郵政の舵取りを任された斎藤氏は「小泉郵政改革」の逆行を推進してきた。その最たるものが宅配便合弁事業の見直しであり、JPEX事業を推し進めた郵便事業会長の北村憲雄(元イタリアトヨタ会長)氏を今年3月、辞任に追い込み、ゆうパックへの統合を強行した。

関係者は「中元商品の発送時期に当たる7月初めの統合に、現場では懸念する声があったが耳を貸さなかった。事業センスのない役人の発想」と、斎藤-鍋倉コンビを批判する。大量遅配の発生を公表した5日、斎藤氏は記者団に「事態を厳粛に受け止める」と語ったが、お詫びの言葉はなかった。

その斎藤氏は春先から、ゆうちょ銀行預け入れ限度額の2千万円への引き上げなどを盛り込んだ「郵政改革法案」への理解を取り付けようと、大手マスコミのトップや編集担当役員に面会を求め、「陳情」攻勢をかけているが、一部を除いて対応は冷ややかだ。大蔵官僚時代に、「デン」と座っていたため「デンスケ」とあだ名された傲慢な態度が抜けないからだ。

「デンスケ」の人となりを示す、こんなエピソードがある。ある大手新聞社が、大蔵省退官後、不遇をかこっていた斎藤氏を自社主催のオペラ公演に招待した。ところが後日、「尋常でない剣幕で抗議を受けた」と関係者は明かす。「自分の席の近くに有名料亭のおかみが座っていた。水商売の人間と一緒に扱うとは、何事か」とまくし立てられたそうだ。「招待席の入場料は5万円前後で、カップルでの招待なら10万円はするものだった」と関係者は言う。

「斎藤さんといえば、夕飯は『吉兆』でご馳走になるのが当たり前というエラい人だった」と、現役記者時代に交流があった新聞社の元役員は振り返る。

ゆうパック騒動が発覚する直前の7月3日、日本郵政社長に就任する前の斎藤氏のポスト、東京金融取引所社長の退職金が9千万円に決まったとの報道があった。斎藤氏はその前の大蔵省退官時にも約8千万円の退職金を手にしており、日本郵政社長を退く際の退職金を含め、受け取る退職金の総額は2億円を超えるだろう。

斎藤氏の後ろ盾である国民新党は参院選で獲得議席ゼロに終わり、「ねじれ国会」で郵政改革法案が成立する見込みはない。野党側は、斎藤氏や鍋倉氏ら官僚OB役員の退陣を求めるだろう。そもそも「脱官僚」をマニフェストに掲げる民主党が、元大蔵事務次官の斎藤氏を日本郵政のトップに起用したことが、大きな間違いだった。

   

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