世界初のEV量産 三菱自動車の最後の賭け

電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」

2009年7月号 連載 [PRODUCT Review]

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三菱自動車が7月下旬に発売する電気自動車(EV)「i-MiEV(アイ・ミーブ)」が注目を集めている。2009年度の販売計画は1400台。自治体や法人ユーザー向けの予約は早くも「完売」した。一般個人向けには10年4月から発売する予定だが、「すでに問い合わせが殺到している」(同社)と反応も良い。

アイ・ミーブの特徴は何と言っても、環境性能の高さとエネルギーコストの安さだ。走行中の二酸化炭素(CO2)排出量はゼロ。10㎞走るのに必要な電気代はわずか10円(夜間電力使用時)とガソリン車の5分の1。トヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」に比べても3分の1程度で済む。

とはいえ、課題も多い。最大のネックは459万円という価格。エコカーに対する政府の補助金を使えば約320万円にまで下がるが、それでも200万円前後のホンダ、トヨタのハイブリッド車に比べ割高感が強い。さらに電池性能の制約で、一回の充電で走れる距離は最高160㎞。急速充電施設を街中に整えなければ走行中の不安は残る。

三菱自動車にとっての悩みは収益性だ。黒字化するのは「年3万台」(益子修社長)で、当初は売れば売るほど赤字になる。リコール問題による存亡の危機から5年。「世界初の新世代EV量産メーカー」という称号を得た同社だが、EVが孝行息子に育つのはかなり先になりそうだ。

   

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