2009年6月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
出版業界の構造不況は底なし沼だ。出版科学研究所の調べによると、08年の出版物(書籍・雑誌)の推定販売額は2兆177億円と前年より3.2%減少。書籍が前年比1.6%減の8878億円に対して、雑誌は4.4%減の1兆1299億円と、落ち込みがより深刻だ。しかも98年から実に11年連続のマイナス成長である。このあおりで「主婦の友」(主婦の友社)、「論座」(朝日新聞出版)、「PLAYBOY日本版」(集英社)、「現代」(講談社)、「読売ウイークリー」(読売新聞)などが相次いで休刊した。月刊誌と週刊誌の内訳を見ると、月刊誌が4.5%減の8722億円、週刊誌も4.5%減の2577億円と押しなべて振るわない。中小書店(いわゆる町の本屋)の減少やコンビニエンスストアでの販売不振が顕著だという。書籍も冴えない。例年どおり「ハリポタ」シリーズは好調で、最終巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』が初版180万部で68億円を売り上げたものの、書籍全体では前年より148億円のマイナスを記録。ハリポタ以外のベストセラーは『夢をかなえるゾウ』(累計155万部)、『B型自分の説明書』(160万部)、『O型自分の説明書』(143万部)、『A型自分の説明書』(131万部)、『ホームレス中学生』(105万部)、『女性の品格』(100万部)など、値が張らない文庫、新書、ケータイ小説ばかりだった。
出版業界では長期低迷の理由として「携帯電話の通信費増、少子化、新古書店・漫画喫茶の影響、図書館での貸し出し増加」などが指摘されているが、より根本的には「いまの世の人々に、何をどう伝えるか」という出版の原点となる思いが薄弱なのが原因ではなかろうか。