2009年6月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]
安易で低劣な番組が氾濫するテレビの現状に業を煮やした経済界がついに動き出した。トヨタ自動車、キヤノン、新日本製鉄、東京電力、三菱重工業、三井物産など日本を代表する大手企業26社が4月28日、社員へのアンケートで「良い番組」を選び、公表する「優良放送番組推進会議」(委員長:有馬朗人・元文相)を立ち上げたのだ。
第1回の選定テーマは「報道番組」で、トップは「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)。2位は「クローズアップ現代」(NHK)、3位は「週刊こどもニュース」(同)と視聴率ランキングの常連ではない番組が上位を占め、視聴「率」と視聴「質」の乖離を浮き彫りにした。
推進会議の有馬委員長は「今の放送は視聴率が“神様”となっている結果、番組の質が低下している」と放送界の現状を痛烈に批判。「みんなが良い番組と考えるものを積極的に応援したい」と会議設立の狙いを強調した。
会員企業は1社あたり年間20万円の運営資金を拠出する。会員企業のほとんどは民放の大スポンサー。「今後はテレビ番組にカネを出す代わりに口も出す」と、発足に関与したある企業の役員は言い切る。
背景には「CMを提供した番組の視聴率が高くても、商品・サービスの売れ行きは必ずしも良くならない」という現状がある。電通の子会社、ビデオリサーチが事実上独占する視聴率という「神様」の客観性を疑問視する声が経済界に増えている。
一方、局側は「広告収入の激減が続く中で、アンケートの評価が低かったら、CM料の値下げなどの口実にされるのではないか」(キー局幹部)と戦々恐々としている。