セブン‐イレブン批判本を「封殺」するトーハン

2009年2月号 DEEP [ディープ・インサイド]

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書籍取次大手のトーハンが、週刊金曜日取材班と古川琢也氏の共著『セブン−イレブンの正体』の配本にストップをかけたことが、師走の出版業界に波紋を呼んだ。批判されたセブン−イレブンが自らの店先から同書を締め出すならわかるが、なぜ、出版流通の元締めのトーハンが配本を拒絶するのか。関係筋によれば「セブン−イレブンの盟主である鈴木敏文氏がトーハンの取締役副会長を務めており、その告発本を扱うわけにはいかないと週刊金曜日側に通告してきた」という。

セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木氏は中央大学卒業後、東京出版販売(現トーハン)に入社。30歳前後でイトーヨーカ堂に転じ、セブン−イレブンを日本一のコンビニチェーンに育て上げたことはよく知られている。全国約1万2千店のセブン−イレブンを支配し、トーハンの副会長を兼務する鈴木氏に対する批判は出版業界のタブーとされてきた。ある大手出版社の役員は「鈴木会長の逆鱗に触れる雑誌を出したらセブンの店先から撤去されるのは目に見えている。おまけにトーハンに圧力をかけられたら書店に出版物が行き渡らなくなる」と打ち明ける。夕刊紙の幹部も「(駅売りの)キオスクの売り場が年々狭くなっており、夕刊紙やスポーツ紙のコンビニ依存度は4割を超えている。セブン批判は一行も書けないよ」と諦め顔だ。

書籍流通は日販とトーハンがほぼ独占しており、その片方から配本を拒否されたら飯の食い上げだ。週刊金曜日がジャーナリストらに窮状を訴えたため、ネット上にトーハンの「暴挙」を批判する書き込みが溢れた。

告発本の中身が事実無根なら訴訟を起こして争うのが筋だろう。ところが、セブン−イレブン側には事を荒立てたくない事情があったようだ。というのは、批判された内容が、現在争われている裁判に絡んでいるからである。事情通の司法記者が解説する。

「コンビニ店オーナーたちが、セブン−イレブン本部が商品仕入れ代金を隠し、その一部を不当にピンハネしてきたと訴えています。昨年7月には最高裁がオーナー側の言い分を認め、セブン本部はオーナー側に仕入れ額がわかるように請求書や領収書を開示すべきだとして、東京高裁に差し戻したのです。『セブン−イレブンの正体』は、それを暴いた告発本なんです」

セブン本部が仕入れ先から送付される請求書などを秘匿し、原価情報を独占してきたのは業界周知の事実のようだ。この常識では考えられない手法が許されたのは、フランチャイズ契約で本部が商品代の支払いを代行する仕組みになっていたから。本部に原価情報を独占されたオーナーたちは「仕入れ代金やリベートのピンハネ隠しだ」として訴えていたのである。この東京高裁への差し戻しは3月頃に結審の見込み。もし、オーナー側の主張が通れば「セブン−イレブン全店で年間1千億円(推定)を超える『ピンハネ』が表面化する可能性がある」(前出の司法記者)。さらに、オーナーによる過去に遡った代金返還請求訴訟が続出するだろう。

週刊金曜日のアピールやネット上での「言論封殺」批判が効いたか、トーハンは年の瀬に配本ストップを撤回し、事態は沈静化に向かった。しかし、1月末にはもっと強烈なセブン−イレブン告発本が日新報道から出版される予定。トーハンの対応が注目される。

   

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