「グーグル・アース」規制かテロリストに使われ脅威深刻

2007年3月号 GLOBAL [グローバル・インサイド]

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 英防諜機関MI5は、国際テロ組織アル・カイダが、衛星写真を利用した地理検索「グーグル・アース」を使い、英国のテロ標的を定めているとの情報を得た。姉妹機関である対外諜報機関MI6も、ブッシュ米大統領が1月に発表した新イラク政策によりイラクへ増派される2万1千人の米兵駐屯地の情報を得るため、アル・カイダがこの「ネット世界地図」を使っている事実をつかんだ。

 1月上旬、バグダッドやバスラにある反政府分子の隠れ家を捜索した際、グーグル・アースで検索した画像の印刷物が押収されたという。複数の家屋の床下に隠された印刷物の画像は駐屯地内の細部までとらえており、捜索にあたった関係者によると、「トイレ棟、食堂のテントや寝室まで含まれていた。駐バスラ英軍本部が配置されるシャット・アル・アラブ・ホテルの写真の裏には、ホテルの位置を示す正確な緯度と経度が記されていた」。

 ロンドンでも、テロ容疑者がグーグル・アースを利用しているかどうか、確認にMI5が乗り出したところ、マンチェスターに住む容疑者が核施設を含む発電所の機密構造の画像を収集していることが判明した。

 グーグルのスポークスマンは、映し出される画像は様々な形で一般公開されているもので、過去の映像であるとしているが、「悪用される可能性がある」ことは認める。「もちろん政府の要請に従う方針で、軍とも連絡を取るようにした。準備はまだ整っていないが、要請を受けてきちんと対応するつもりだ」と述べている。このため英国の諜報機関幹部は、グーグルがフランス全土をカバーする「ジオポータル」と同様、機密地域の画像を白紙にするよう要請することを検討中だ。

 グーグル・アースが国家機密に抵触する事例は他国でも起きている。バーレーンが国内でグーグル・アースにアクセスするのを完全にシャットアウトしたのは、反政府グループが王家一族の宮殿所有状況を調べていることが判明したからだ。中国では、グーグル・アースで北京の西側に従来なかった丘があることが分かった。人民解放軍が軍事演習を行うために人工的に造り、後に取り壊したという。

   

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