低迷巨人軍切り離しの荒療治

2006年10月号 連載 [メディアの急所]

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 巨人軍の不振は目を覆うばかり。近頃は話題にもならない。元阪神でメキシカンリーグに落ちぶれていたアリアスがこの夏巨人入りした時は、誰もが目を疑った。案の定、打てない、守れない。こんな補強をフロントが思いついたのだとしたら、辞表など何枚あっても足りない。

2年前、明治大学の一場靖弘投手(現楽天)に野球協約違反の小遣いを渡していたことが露見して、堀川吉則会長はじめ球団社長、代表が揃って免職された事件は今や旧聞に属する。しかし、親会社の渡辺恒雄読売新聞社会長自らもオーナーを辞任し、引責の範を垂れたのも束の間、1年後には球団会長職に復帰し、口を挟んでいるのは、見苦しい。

免職の憂き目にあった3氏とも、渡辺氏子飼いの政治部出身だったが、後に納まった桃井恒和社長、清武英利代表は社会部出身。とりわけ清武氏は日本新聞協会賞を受賞するなど、社会部のエース。その下で働きながら球団に転出した原沢敦取締役(総務・編成本部長補佐)も社会部長候補の一人だった。

政治部から一転して社会部人脈が舵を取ることになった巨人軍の経営に対して、「敏腕記者がいかに腕を振るっても時代の波は止められない」という声が社内外でもっぱらだ。弱いジャイアンツはもはや風前の灯。それに気づきながらも、渡辺会長にもの申せぬ読売上層部はいかんともしがたい。肝心の販売部数1千万部が、必死の押し紙でも崩れつつある今、巨人の凋落は、読売新聞に挽歌を告げる予兆かもしれない。ならば低迷巨人軍切り離しの荒療治が、新聞本体の浮沈のカギを握っている。

   

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