レノが牙剝き「石綿アコーディア」は驀進中

2013年11月号 BUSINESS

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村上ファンドのインサイダー取引摘発後、シンガポールに移住した村上世彰は、本誌前号の記事(「アコーディア『S─REIT』浮上」)を穴のあくほど見つめたに違いない。彼のダミーとみられる投資会社レノが筆頭株主になったゴルフ場最大手アコーディア(東証1部)が、シンガポールで不動産投資信託(REIT)を上場し、最大2千億円を調達して自社株買いを検討している、と報じたからだ。

PGM(東証1部)の敵対的TOB(株式公開買い付け)に乗じて、レノは約20%もアコーディア株を買い漁ったあげく、PGMのTOB失敗で高値売り抜けができなくなり、自らも守秘義務に縛られて株が塩漬け。本誌報道は守秘義務免除の理由になる。そのレノが牙を剝いた。

アコーディアに対し「3月末までにS─REITを上場しないなら守秘義務解除とみなす」と宣したという。本誌はシンガポール開発銀行(DBS)の裏で村上が糸を引き、アコーディア株を買い取らせる機会をつくろうと動いたと見ているが、この宣言、その催促に聞こえる。

本誌報道に否定リリースも出せないアコーディアは、株主や会員からの問い合わせの嵐にもダンマリだが、S─REIT計画を主導する顧問弁護士の石綿学(森・濱田松本法律事務所)は、予定を遅らせても上場を強行する方針で、鎌田隆介社長らも当面は一枚岩のようだ。

12月20日に償還期限を迎える社債について「レノがいる間はお付き合いできない」としていたメガバンクが急に軟化、償還原資100億円を融資してくれることになったからだ。これもFACTA効果だろうか。

買収に二度失敗したPGMにメガは「様子をみましょう」と押さえ役に徹しているため、年末のデッドラインが繰り下がった。経営陣の腹積もりでは、臨時株主総会は来年1月、翌月にはシンガポールで上場申請し、4月までに上場、自社株買いを済ませる。6月株主総会で株主名簿を間に合わせるためだ。

今は専ら投資家めぐりのオープンリーチ中というが、問題は自社株買いの価格。レノ保有の20%を吸収するなら40~50%規模が予想され、消却すれば株価上昇要因。それを見越すレノにとっては、買い平均価格の1・5倍から2倍の1株1500円前後が目標価格だろうか。

株価はすでに本誌報道後に一時1250円の高値をつけた。裏でアコーディアとニギリがないかどうか、証券取引等監視委員会にとっては、株価操縦の有無とともに注視の的だろう。社債償還でレノを問題視し、アコーディアに圧力をかけたメガバンクが、結果的にはレノ(と背後の村上)を利することになったのは皮肉と言うほかない。

もっと皮肉なのは石綿本人だろう。暴力団融資問題で揺れるみずほが10月8日、発足させた特別調査委員会に石綿も入った。みずほはアコーディアの主力行の一つ。片方でみずほが「反市場」勢力とみなすレノを利する計画を猛然と進めながら、片や「反社会」勢力との関係を洗い直すチェック役とは、利益相反ではないのか。(敬称略)

   

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