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無責任「有料メルマガ」はネットの徒花か

2013年1月号

有料メルマガの火付け役は獄中にいながらにして年商1億円以上を稼ぎ出しているホリエモンこと、堀江貴文氏だ。2011年6月に収監されたが、10年2月に開始した毎週月曜日配信の有料メルマガ「堀江貴文のブログでは言えない話」を今なお獄中から発行し続けており、その購読者数は約1万2千人にも及ぶ。月額840円、単純計算すればざっと1億円だ。

インターネット業界の著名人が有料メルマガを発行して収入を得る。このブームが起きたのは12年の夏頃だ。これまでメルマガといえば無料で配信され、広告収入で稼ぐスタイルが一般的だったが、著名ブロガーらが一斉に有料メルマガを開始したことでにわかに注目を集めた。

従来、書き手側は雑誌やニュースサイトに定期コラム欄を持ち、知名度を上げつつ、原稿料という形で収入を得る手法が一般的だったが、有料メルマガのブームは、この手法に頼らなくても個人の力でマネタイズが可能だということを証明した。そのため、雨後の竹の子のように有料メルマガが生まれた。

しかし、どこの世界にも三日坊主はいるもの。最たる例は、レンタルサーバー事業などを運営するpaperboy&co創業者の家入一真氏。7月に「生け贄スタイルの理論と実践」と題したメルマガの発行を開始。当初、月額735円で週1回、月4回以上配信をうたっていた。しかし、まともに4回配信できたのは開始翌月の8月のみ。9月には3回の配信となり、10月に至っては1回のみで配信が終わってしまった。

これにキレたのはお金を支払っていた購読者だ。約束された配信数を受けとっていないにもかかわらず、課金だけは続いていたというから当然だろう。配信していたメルマガ配信プラットフォーム運営会社「夜間飛行」はクレームを訴え出た購読者には返金で応じたようだが、購読者の怒りは収まらない。今度は運営会社側が次々とサービスの表記を変更し始めたからだ。

「まぐまぐ!」は発行周期を「不定期」としながら、月額735円の価格表示の一部を変更。1配信あたり約147円と注意書きを掲載していたが、これを削除した。「夜間飛行」もまた、「毎週1回発行」の表記を削除。勝手に契約時とは異なる条件に変更していく運営会社に対する不信感は高まり、一部の購読者からは「詐欺行為だ」との声も聞こえてくる。

ほかの有料メルマガ発行者もなかなかルーズだ。ジャーナリストの津田大介氏や著名ブロガーの山本一郎氏らも、これまでに度々遅延している。家入氏は断りもなく配信しなかった点で稀有な例とも言えるが、有料メルマガ業界全体で遅延の常態化が起きていた感は否めない。獄中のホリエモン並みにメルマガに時間を割けないのは仕方ないが、定期購読料を徴収している以上、発行者は責任を伴う。

同時に、ブログと同じ感覚で書き手を増やしてきたメルマガ運営会社側も責任は免れない。書き手が契約内容を守っているかをチェックするのはプラットフォーム側の最低限の務めだろう。コンテンツの対価を利用者側が支払う感覚が薄いインターネットにおいて、有料メルマガは1つの課金形態として期待を集めた。このまま「電子書籍前夜」の徒花で終わらないためにも、信用回復が急務だ。