SNSゲーム会社「グループス」社長の脛に傷

2012年5月号 BUSINESS

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「マジゲーやったらマジ友だ!」のテレビCMを展開するソーシャルゲーム会社、グループスが好調だ。2011年12月の同社のゲーム利用者数は1200万人。ディー・エヌ・エーの「モバゲー」上では仮想通貨「モバコイン」の消費量が月間20億円を記録するなど、ナンバーワンの地位を築いている。

同社が提供するソーシャルゲームの中でも、稼ぎ頭は「大熱狂!!プロ野球カード」といった実名の選手が登場する野球ゲーム。人気を背景に、同社は実在の球団との提携を次々に発表している。1月31日にはオリックス・バファローズと公式スポンサー契約を結び、3月19日には米テキサス・レンジャーズとのパートナーシップ契約を締結。3月22日には楽天イーグルスとの公式スポンサー契約を結ぶなど、無数にあるソーシャルゲーム開発企業の中でも頭ひとつ抜けている存在だ。

同社は創業者の梶原吉広社長が05年8月に広告代理店業のグローバルメディアソリューションを設立したのが始まりだ。その後、ソーシャルゲーム「渋谷クエスト」の大ヒットを機に事業を拡大。10年5月には社名をGMSに、11年8月には現在のグループスに再び変更し、ソーシャルゲーム業界の主力企業として注目を浴びるまでに成長した。現在は米国やベトナムに子会社を設立するなど、グローバル展開も急速に進めている。ライバル企業の幹部は「他の事業者にはない営業力がある。社長もイケイケで一時期の光通信のような社風」と評す。

今、ソーシャルゲーム業界では上場が相次いでおり、上場予備軍に数えられる企業の中でも、高収益を続けるグループスに次のステージを期待する声は多い。だが、同社には上場に踏み切れない理由がある。それは公にはされていない、梶原氏の消せない過去だ。

事件は04年に遡る。広島県警ヤミ金融集中取締本部と広島南署が7月21日、元ヤミ金融業「ワイフル総合サービス」のアルバイト従業員を逮捕した。その人物こそ現グループスの社長を務める梶原氏だ。容疑は出資法違反。ワイフルは多重債務者のリストをもとに法外な利息で強引な貸し付けを行っており、03年の1年間で450人から計2695件、合計1億3千万円もの振り込みがあったという。梶原氏は後に罰金刑を受けている。

関係者によると、梶原氏は上場しない理由について「経営の自由度が減るから」と話していたというが、上場したくてもできないのが実態なのだ。大手証券会社のIPO担当者は「梶原氏が社長でいる限り、上場はできない。幹事を引き受けるところはないだろう」と断言する。

それが理由だろう。同社では現在、梶原氏が会長に退き、川方慎介執行役員が社長に就任する組織変更が水面下で進められている。4月16日の株主総会で承認されれば、近く発表という見通しだ。本誌の取材に対し、同社は「逮捕は事実。本人も深く反省している。ただ、社長交代は組織力向上を狙ったもの」と因果関係を否定した。

高収益を謳歌するソーシャルゲーム業界だが、「射幸性」をめぐって霞が関が摘発の構えを見せているのは既報の通り。脛に傷を持つ同社への風当たりも厳しくなりそうだ。事実を知った大手広告代理店では既に騒ぎになっている模様だ。

   

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