敗れざる「落選者」/政治団体「ポラリス」が政策ヴィジョン/「起業家の覚悟」で野党の旗を立て直す!/寄稿 宗野創氏

号外速報(10月21日 12:30)

2026年11月号 POLITICS [号外速報]
by 宗野 創 (前衆議院議員)

2024年10月27日、当時31歳の私は、衆議院選挙で川崎市中原区・高津区から立候補し、県内最年少で初当選をさせていただいた。キャッチコピーは「平成生まれ、新時代への挑戦。」無我夢中で駆け抜けた選挙戦だった。

祖父母の介護を原点に国会へ

松下政経塾で学び、31歳衆院初当選、そして落選(写真は、松下幸之助塾主、HPより)

私の原点は家族での介護だった。祖母がパーキンソン病、祖父が脳梗塞でそれぞれ要介護5、要介護4の認定を受けた。当時小学生であった私は、共働きで帰りの遅い両親が帰るまでの間、生活介助しながら祖父母と過ごした。

約10年間の介護生活の末、祖父母は亡くなった。その時に私は、「人生には自己責任ではどうしようもないことが起こる」と痛感した。人生の困難を簡単に自己責任という言葉で切り捨てることなく、互いが支え合いの中で幸福を実感できる社会をつくりたい。その思いは今も変わらない。

大学卒業後、銀行に就職し営業を4年勤めたのち、退職。松下政経塾に入塾した。入塾後は、全国の福祉現場や、福祉国家スウェーデンで政策研究を行った。

議員在職中は厚生労働委員会に所属し、社会保障分野を中心に議会活動を行ってきた。まさに私にとっては天職だった。しかし、その任期はわずか1年3か月で終わりを迎える。選挙は完敗だった。

「まだまだ国会でやり残したことがある。」

落選後も、ライフワークである福祉・子育て分野で仕事をしたいと思い、介護事業所、幼稚園での仕事と両立しながら政治活動を継続することを決めた。

2月8日の敗戦の翌日から、平日は今も駅に立ち続けている。

しかし、いま国民の皆さんから野党に向けられる視線は決して甘くはない。視線に込められるのは、ある種の呆れ、諦めに近い感情だ。

ブレることなく政策を磨く「北極星」

中道落選者を中心に現職議員、学識経験者など約20名が集った、政策を議論する合宿勉強会(9月22日)

今こそ、私たちの手で野党の旗を立て直そう――。

Polaris(ポラリス)は、選挙後間もない今年3月、山岸一生事務局長をはじめとした1期・2期の落選者を中心とした若手が立ち上げた政治団体である。

*「中道落選」若手有志が「Polaris(ポラリス)」旗 揚げ!https://facta.co.jp/article/202603055.html

定例会、会内勉強会といった内部の活動にとどまらず、毎週火曜日のYouTubeライブ配信、6月には思想家の齋藤幸平氏をお招きしてのリアルイベントなど「開かれた対話」の場を重視してきたことも大きな特徴だ。遠心力ばかりが強まる野党勢力のなかで、ブレることなく前向きに政策を磨く北極星(Polaris)でありたい、という決意で活動している。

去る9月22日、ポラリスは政策を議論する合宿勉強会を行った。

山岸一生氏、酒井なつみ氏、松尾明弘氏ら中道落選者を中心に現職議員、学識経験者など約20名が都内に集った。

これまでの議論の蓄積を踏まえ、経済、社会保障、人権、外交、憲法、統治機構改革などそれぞれ分科会に分かれ、最終的には3本の重点政策を含めた、7本の政策の柱を議論した。

そのうち、特に大きな議論となったのが、「強い円を取り戻す経済政策」と「住まいの不安ゼロの住宅政策」の二つの柱である。

明確な経済政策のオルタナティブ

敗戦の翌日から、平日は今も駅に立ち続けている筆者、宗野創氏

近年の物価高最大の要因は円安である。

短期では日米の金利差による影響が大きいとされているが、中長期では日本経済のファンダメンタルに影響される。こうした中で、高市政権の「責任ある積極財政」のもと、いま日本の財政への国際的信頼は揺るぎ始めている。

臨時国会最大の論点である食料品消費税減税。さらには、来年度予算においてシーリング(天井)なしの「強く豊かな日本投資枠」を設けたことで、各省庁から143兆円と過去最高規模の概算要求が提示されたことも記憶に新しい。

さらに、マクロにみても日本経済の先行きは非常に厳しい現状がある。

国際通貨基金(IMF)が10月12日に公表した世界経済見通しでは、日本の名目GDPが2027年にインドと英国の両方に抜かれ、世界6位に下がる見込みとなった。日本経済の国際シェアは縮小の一途をたどっている。

こうした中で、野党は経済政策で明確なオルタナティブを提示することができるかが問われている。

ポラリスビジョンでは、財政健全化目標の再設定、日本銀行の独立性の確保により、財政規律を堅持する。あわせて、税制の累進性強化を含め負担のありかたを見直す。そのうえで、日本経済における供給力の強化に対して集中的に投資を行う。

日本経済の生産性に関する研究者でもある経済学者の宮川務氏はハード面では、日本のICT化は国際的上位にあるものの、それを効率的に利用する能力やシステムの面で劣位にあることを指摘する(宮川務著/『投資で変わる日本経済―「アマチュア資本主義」を活かす途』ちくま新書)。

それらを研究開発投資、ソフトウェア投資、訓練投資、組織改革投資に分けた際に、いずれも国際的に劣位であり、特に人的な訓練投資と組織改革投資に関しては1990年代半ばから2010年代後半まで、マイナスという現状である。

さらに、宮川氏はデジタル投資の対象としては、個別の企業のデジタル化を補助金などでサポートするより、むしろ公務、医療、社会保障など多くの人々が利用する業種に集中的に投資をすることが効果的であるとしている。ポラリスビジョンもまさにこの指摘と方向性を一にするものである。

「住まいの不安ゼロ」実現ロードマップ

ポラリスのイベントに集まった仲間たち

住まいの不安ゼロに関しては、特に首都圏の有権者から多くの声が上がっている。

近年の家賃高騰により、首都圏の家計に占める居住コストは年々上昇している。こうした状況で、労働者の4割を占める非正規・フリーランスの方は、企業の福利厚生として提供されてきた家賃補助を受けることはできない。

また、持ち家世帯には、住宅ローン控除があり、住まいの在り方による不公平感がかねてより指摘されてきた。私たちは、公的な家賃補助制度の創設を提案する。すでに、立憲民主党の政策の一つとしても訴えてきた政策だが、東京都内の一部自治体では対象を絞った形で実現している。

例えば、対象を39歳までの単身若年層に月3万円を支給すると年間2.5兆円程度の予算と試算される。対象者や具体的スキームに関して先進事例を研究し実現へのロードマップをつくりたい。

さらに、「住まいの不安ゼロ」には、地方における生活の足であるバス交通の確保、公的な医療機関の支援も含まれる。もはや、住まいの安心が当たり前でなくなった今、社会保障として住宅政策を再構築する必要がある。

マムダニ市長の改革志向に学ぶ

ラディカルな政策に取り組んでいる、民主社会主義者のマムダニNY市長は、筆者の二つ年上の35歳。

政策研究にあたり立憲民主党の政策集を改めて振り返ってみた。

正直、「ここまで議論がされていたのか」と感心する項目も多々ある。しかし、それと同時に「私たちが良いと思う商品を、網羅的に並べる」政策百貨店のような印象は否めない。

いわゆるプロダクトアウト型の政策立案がなされた結果、国民のニーズとの乖離が生まれてきたともいえるだろう。

また、これらの政策は、丁寧なプロセスを経て精緻に議論されてきたからこそ、角が取れ丸みを帯びた仕上がりとなり、政権与党との違いが見えづらくなってしまった側面もある。

海を渡ったニューヨークでは、民主社会主義者ゾーラン・マムダニ市長(35)の政策が注目されている。家賃凍結、市営スーパーの設置、公営住宅の整備などラディカルな政策に取り組んでいる。こうした左派的政策を進める一方で、規制改革にも取り組んでいる。

マムダニは7月に小規模事業者向けの50以上の規制改革を発表した。飲食店のアイスクリーム販売に関する二重許可の整理、ボデガ(小さな食料品店や雑貨店)の店頭販売免許の簡素化、軽微な違反への罰金見直し、ボデガのライセンス簡素化など、商業実態に即して既存の規制の整理をはじめた。

ここからは、単なるイデオロギー型の左派政策とは一線を画し、生活のリアリティに根差した改革志向が見て取れる。

政策合宿の終盤、ある学識経験者から厳しい指摘の声があがった。

「いまの野党の政策からは生活者の顔が見えない。」

今、私たちにはリベラルか中道かといった政局的ポジション以前に、生活者の顔がどれだけ浮かんでいるだろうか――。

日常活動を通して徹底的に多様な生のリアリティに接し続けること、そして社会構造的課題をマクロな視点で見渡す知見を持つこと。それこそが、「顔の見える」マーケットイン型政策への転換の道だと考えている。

今回の議論は、あくまで通過点にすぎない。今後も、内外を問わず議論を重ね、ポラリスビジョンとして広く世に問うていきたい。

「弱者競争」まねく選別主義的社会政策

タウンミーティングで熱弁する筆者

政策のアップデートのもう一つのカギは「人への投資」だと考える。

アジアで最も成功した福祉国家ともいわれる日本の社会保障制度には、いくつかの特徴がある。例えば支出からみると、その多くが社会保険を主な財源としている医療・介護サービスに充てられている。

一方で、就労支援、子育て等の家族支援、障害者支援などはOECD各国と比べても低水準にある。これらのサービスは現役世代が主な対象となる社会保障制度といえる。また、福祉行政は事後対応が中心であり、対象と課題を特定し、申請方式で給付やサービスを受ける。

選別主義的社会政策は「誰がより弱者であるのか」を競う、いわゆる弱者競争をまねく。

社会学者の伊藤昌亮氏は、貧困層やマイノリティーなどの「明白な弱者」にはカウントされず、社会的にはやや不利な状況に置かれ、鬱屈した〈割を食っている〉感情を持て余している「曖昧な弱者」の存在を指摘した(伊藤昌亮著/『曖昧な弱者の時代』岩波新書、2026年)。

こうした状況は、長年の日本経済の停滞に加え、現役世代へ向けた社会政策の不足、選別主義的社会政策が生み出した一つの結果ともいえる。これまで野党は再分配の重視を看板に掲げ、既存の社会政策を「強化」する方向性を打ち出してきた。しかし、現状を踏まえれば、その方向性もアップデートが必要だ。

具体的には、現役世代のための社会保障、労働分配率を高める政策、研究開発・人材教育への徹底投資、AI社会を前提とした産業基盤の構築などの政策解像度を高め、「人への投資」という軸のもとで政策パッケージとして提示をしていきたい。

「いまやらねば…わしがやらねばたれがやる」

野党に対する厳しい国民感情は、政策のみならず、政党組織の在り方にも向けられていると感じている。

私たち野党はその立場に甘んじ、いわゆる大企業病に罹っていたのではないか。

世論と向き合う政策の再構築、意思決定のスピード向上、人材の新陳代謝、広報を含めた新たな挑戦、など課題は様々にあった。

しかし、これらの課題に対して、経路依存的に対応し、組織文化を盾に十分に変革がなされてこなかったのではないか。その結果が、現在の野党をめぐる壊滅的な状況に繋がっているのではないか。

当事者として強い問題意識をもっている。国民の多くが求めているのは、野党第一党の座を守ることを目的とし、組織に依存する政治家ではない。

自分自身の足で立ち、現状を打ち破り挑戦する「起業家としての覚悟」ではないだろうか。

松下政経塾の幸之助翁像に刻まれた言葉がいま私たちに語り掛ける。

いまやらねばいつできる わしがやらねばたれがやる

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著者プロフィール
宗野 創

宗野 創 (そうの はじめ)

前衆議院議員

1993年1月5日生まれ33歳。神奈川県出身。桐蔭学園高等学校、早稲田大学政治経済学部卒業。卒業後、株式会社三井住友銀行入行。松下政経塾41期生。2024年衆議院議員初当選。立憲民主党政調会長補佐等を歴任。

介護経験を原点として、厚生労働委員として活動。現在は、政治活動を継続しつつ、医療・介護施設、幼稚園で勤務。ハリウッド大学院大学客員講師をつとめる