2026年7月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
富山県・立山と長野県・扇沢を結ぶ「立山黒部アルペンルート」を旅してきた。途中の関電トンネル(大町トンネル)と立山トンネルでは排ガス対策でトロリーバスが走っていたが老朽化で、それぞれ2019年春と25年春から電気バスに更新し、日本からトロリーバスは消えた。
関電トンネルの電気バスは日野自動車のバス「ブルーリボン」を改造した12台。東芝製リチウムイオンバッテリー「SCiB」を積んでいる。負極材料がチタン酸リチウムで発火しにくく、充電時間が短い。10分程度の充電で往復約12キロのルートを往復できる。立山トンネルは中国BYD社の「K8」を8台採用した。バッテリーはBYD製のリン酸鉄リチウムイオン電池を積む。
安価な「K8」は好調だ。関東鉄道は23年から2台、25年から4台を運行する。関西国際空港は空港内だけを走るランプバスに4台を使い、遠州鉄道は今年3月に1台を導入した。
大阪・関西万博の来場者輸送に使ったEVモーターズ・ジャパン(北九州市)の電気バスは会期中にトラブルが相次いだ。国産をうたったが実質は中国の福建威馳騰汽車など3社が手がけていた。中国製電気バスの品質に疑問がついたが、「K8」の動向を見る限り、電気バスは国産よりも中国製が優勢だ。
中国勢が電気バスに続き、電気トラックでも攻勢をかけてくるのは必至。日本自動車工業会によると24年のバスとトラックの国内生産台数は計約110万台で、全体の13%強を占める。危機感を抱く経済産業省は6月4日、燃料電池車(FCV)などで水素活用を目指す「水素大動脈構想実現会議」を立ち上げた。トヨタ自動車や岩谷産業など参加企業は福島県から福岡県までFCVトラックによる輸送網を整備する計画だ。リチウムイオン電池で日本は中国に敗れた。水素エネルギーとFCVに反転攻勢の期待がかかる。
(松果堂)