連載コラム:「某月風紋」

2026年5月号 連載 [コラム:「某月風紋」]

経済産業省によれば昨年の「2025年国際博覧会(大阪・関西万博)」は経済波及効果が3兆6000億円に達したという。開幕前に試算した2兆9000億円から7000億円を積み増した。公式キャラクター「ミャクミャク」が人気を集め、土産品の購入額を押し上げた。

原作者で絵本作家の山下浩平氏は『ミャクミャクと…ミャクミャク誕生ものがたり』という絵本でミャクミャクの生涯を描いた。最初は小さな泡状の細胞だったのが生き物や自然とふれ合うことで魚や恐竜、昆虫、哺乳類へと姿を変え、目覚めの雨を浴びてヒト形に進化する。色を変えて虹、太陽、木、夕焼けなどになり、飛行機にも変身する。ドキドキしつつ最終形の情報(データ)になると今度は怒って、泣いて、笑って、悩む。人工知能(AI)を思わせる設定だ。ラストで「みゃくみゃくとつないで……」と永遠の進化をにおわせて絵本は終わる。かなりシュールな内容だ。

カタログ通販大手のフェリシモ(神戸市)が絵本を出版し、通販では品切れで入荷待ちになるほど人気を集めた。日本国際博覧会協会の石毛博行事務総長は3月16日の記者会見で「26年3月までの公式ライセンス商品の売上額は1291億円、ライセンス収入63億円を見込む」と語った。ただ、出版業界では万博協会が絵本にあまり乗り気ではなかったのでは、とも伝えられる。

最大370億円の黒字が出るという万博だが、関西財界からは今も石毛事務総長に批判的な声が聞こえる。パビリオンの建設遅れ報道(実際は大半が間に合った)に充分な反論もせず、中途半端なレジオネラ菌検査で大人気の噴水ショーを長期間止めるなど不手際が目立ったからだ。1970年の大阪万博で事務総長は鈴木俊一氏(後の東京都知事)が務めた。今回の事務総長が鈴木氏クラスの能吏ならば黒字幅はもっと拡大していたかも。

(松果堂)

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