2026年1月号 DEEP

ディルク・オステイン会長(同社HPより)
米国系メットライフ生命保険が内紛に揺れている舞台裏を、11月17日付「号外速報」(FACTAオンラインで公開中)で報じたところ大きな反響があった。その内容は、代理店部門が作成した「えげつない販促資料」が金融庁の知るところとなり同庁の逆鱗に触れたというもの。同部門トップである滝内榮世執行役常務が詰腹を切らされたが、その背後には、金融庁ルートを独占する女性執行役常務がいた。ともに専務職を狙う女性役員。金融庁のホンネと称して真偽不明の恐怖シナリオを首脳部に伝え、ライバルを追い落とすことに成功した。「社内改革」といえば聞こえがいいが、実態は醜い権力闘争だったことを明らかにした。
号外から9日後の11月26日、代理店部門の人事異動が発表された。8人いる統括部長のうち4人が異動となったが、滝内派や古参の「うるさ型」が飛ばされた。関係者を驚かせたのは、後任がいずれも代理店部門の未経験者であり、営業部門トップの篠田宗士執行役専務のお気に入りで扱いやすいタイプだったことだ。
代理店部門はこれまで滝内が独立国のように支配してきた。代理店に疎い篠田が、滝内失脚を好機に同部門の解体に動いた恰好だが、ソリシター→支社長→統括部長職という出世の階段を崩したことで、現場では代理店とのコミュニケーション不全が懸念されている。
ある代理店部門の現役社員はぶちまける。「現場は大混乱に陥り、モチベーションもなくしている。元々、商品性も悪ければ、売り方もひどい。そのうえ、今の経営陣は当局に怒られた時に現場に責任を押し付けかねない」――。社内闘争に明け暮れるメットライフ生命は、そもそも大きな岐路に立っているのだと言う。
自由化以前、がん保険や医療保険は外資系生保が独占販売を許され、アフラックやメットライフの前身であるアリコジャパンが躍進した。貿易摩擦などで米国への配慮から国内生保が参入できるようになったのは2001年になってからだった。独占状況だった当時、保険金の支払い事由となる病気の発生率はかなり保守的に見積もられており、危険差益でぼろ儲けできた。だが国内生保が参入すると、価格面で過当競争が起きた。
外資系2社は、味をしめた本国が利益の送金水準を変えさせなかったため、価格競争で太刀打ちできなかった。ろくな商品を提供できず、複数の生保の商品を扱う乗合代理店では放っておいたら売れない。このためアフラックは既存の専属代理店に他の生保を売らせない「乗合潰し」や、有力乗合代理店への過剰な便宜供与に舵を切った。一方のメットライフは、代理店に過剰な手数料を出したり、悪質な売り方を指南することが多くなった。近年の「顧客本位の業務運営」の流れからすれば、こうした状況は異常であり、金融庁から鉄槌が下るのは目に見えている。
そんな中、社内で最大のリスクと囁かれているのがメットライフ特有の「メディカルインセンティブ」だ。ボッタクリに近い医療保険を多く販売する代理店の手数料ランクを高くする。たとえば最上位ランクは、医療保険以外の商品だけを売っていたら1億円の年間保険料が必要だが、医療保険を1500万円売れば、その他は6000万円で済むようにしている。顧客の意向にお構いなく、医療保険を売りつけたくなる設計になっているのだ。
金融庁は近年、「比較推奨」を求めているが、メットライフは自社商品内の勧誘が歪んでいる。こうした本質的な問題に向き合わず、顧客置き去りの社内抗争を繰り返していれば必ずしっぺ返しがくる。