道理が引っ込む「連続原発再稼働」/東電や北海道電は運用者として適格か

地元首長が相次ぎ再稼働容認発言をしたが、東電や北海道電は運用者として適格なのか。

2026年1月号 LIFE

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テロ対策の不備が露呈したものの、新潟県の花角知事は再稼働容認を表明した

Photo:Jiji

2025年11月下旬、新潟県と北海道の知事が相次ぎ地元原発の「再稼働容認」を表明した。政府・経済産業省の強い圧力が2人の知事を動かした構図だが、本来重視すべき「事業者の適格性」や「経済性」「安全保障」などあらゆる観点から勘案して容認判断は合理性を欠いている。無理を通せば道理が引っ込むとはこのことだろう。

軽さが印象的な新潟県知事

11月21日、新潟県知事の花角英世(67)が東京電力ホールディングス(HD)柏崎刈羽原子力発電所6号機【改良型沸騰水型軽水炉〈ABWR〉】の再稼働容認を明らかにすると、28日には北海道知事の鈴木直道(44)が北海道電力泊原子力発電所3号機【加圧水型軽水炉〈PWR〉】の再稼働を容認する考えを示した。運転再開のメドは柏崎6号機が26年1月、泊3号機が27年度中とされる。

言うまでもなく東電は福島第一原発事故を起こした当事者で、同事故に伴う廃炉・賠償・除染・中間貯蔵費用の合計23.4兆円(23年12月政府公表)が経営にのしかかる。12年7月に国の原子力損害賠償支援機構(14年に原子力損害賠償・廃炉等支援機構に改組)が議決権の50.11%を握り国有化したのは実質破綻したからに他ならない。

「福島事故は東日本大震災による天災」と言い張る原発推進論者は未だに少なくない。ただ、東電の原発不祥事・トラブルを辿れば“黒歴史”満載だ。02年にBWRの製造元である米GE(ゼネラル・エレクトリック)の元技術者の内部告発によって東電社内で原子炉内隔壁のひび割れなどを示す点検記録の改竄や虚偽報告が組織的に行われていたことが明らかになり、同社の全原発17基(当時)は長期にわたり停止を命じられた。

07年7月に起きた新潟県中越沖地震では柏崎刈羽原発内で変圧器からのボヤが発生し、使用済み燃料プールからの水漏れなども起きたが、県への説明が正確性・迅速性を欠いたため当時の新潟県知事の泉田裕彦(63)が激怒。この時の不信感から「福島第一原発事故の検証」を新潟県技術委員会に命じるなど、再稼働について霞が関や永田町とは距離を置く県独自の姿勢を打ち出す根拠となった。

因みに泉田は1987年に京大法学部を卒業し通商産業省(現経済産業省)に入省。資源エネルギー庁にも在籍した元キャリア官僚である。対する現知事の花角は82年に東大法学部を卒業し運輸省(現国土交通省)に入省。99年に当時運輸相の二階俊博(86)の秘書官を務めてから頭角を現したが、目立った実績といえば国交省大阪航空局長時代に手がけた関西国際空港と大阪国際空港の経営一本化くらい。「酒席にも付き合いがよく“軽やかさ”が印象的。沈思黙考の人ではない」というのが大阪時代の担当記者評だ。

東電の不祥事は3.11後も止まっていない。20年に柏崎刈羽原発運転員が別の運転員のIDカードを無断で持ち出し、複数回不正使用していたことが明らかになったのに続き、21年に同原発の不正侵入検知装置が故障のまま長期間放置されていたことが発覚。原子力規制委員会は事態を重く見て、東電に対し原発の運転禁止命令を出した。

この禁止令は23年12月に解除されたが、25年11月20日に開かれた規制委会合で、「核物質防護」に関する機密情報を取り扱う東電社員が20~24年の5年間にもわたり、必要な手続きを取らずに機密情報のコピーを取り自分の机に保管していた事案など、テロ対策に関する3つの不備が報告された。

再稼働容認発言の前日のことであり、原発周辺の従業員の杜撰な体質が改善されていない証左でもあったが、花角は予定通りの記者会見を行った。東電の瑕疵をこれほど安易に看過するなら、何のために15年もの検討時間を県は費やしたのか。

北海道電も“黒歴史”の多さでは遜色ない。東日本大震災以前に発電実績で40%以上を原発に依存していた同社は3.11後に代替火力発電のコストが膨らんで業績が悪化。12年3月期から3期連続で最終損益が赤字に転落した。合計の赤字額は2679億円に達し、14年3月期の自己資本比率は7.6%と「危険水域」に追い込まれた。

やむなく13、14両年に連続の料金改定に踏み切った。2度の改定で一般家庭では約25%、企業向けでは34%もの大幅値上げとなる。この結果、電力事業に新規参入した北海道ガスなどに顧客が大量に流出した。

経営陣は原発再稼働で業績のV字回復を狙った。泊3号機は福島事故を起こしたBWRではなくPWRであるにも拘らず、規制委の審査では同じPWR陣営の関西電力、九州電力、四国電力に先行され、合格となるまで12年もの歳月を要した。「北電の対応があまりに稚拙で資源エネルギー庁から監視役が派遣された」と経産省では囁かれた。

さらに評価を落としたのが18年9月の北海道胆振東部地震後に起きたブラックアウト。震源地に近い苫東厚真石炭火力発電所の停止を引き金に同社管内約295万戸が停電し、復旧まで2日を要した。深刻なのはこの時、停電で泊原発も外部電源が喪失。電源全6回線のうち2回線が復旧するまで6時間余りを要したことだ。事態を深刻に捉えた経産省内では一時、同社の国有化が検討されたといわれた。

2社の原発再稼働は政府・経産省の「異様」ともいえる後押しの賜物だ。例えば、25年10月16日に新潟県議会に出向き再稼働の必要性を説いた資源エネルギー庁長官の村瀬佳史(58)はインタビューなどで「1年間に24兆円程度の国富が化石燃料の輸入額として海外に流出している」(25年11月5日付日経電子版)と述べているが、NPO法人「原子力資料情報室」の試算で火力発電向けの輸入額は年間約7兆円で、他はガソリンや石油化学向けなどと指摘(同12月3日付東京新聞)。ミスリードと批判されても仕方がない。

能天気なメディアの論調

一部メディアの能天気な論調も見逃せない。日経は「再稼働、次の焦点は東海第2」(同11月29日付)とデータ捏造などで札付きの日本原子力発電の原発まで囃し立てている。

海外に目を転じると英フィナンシャル・タイムズ(FT)は「英国の新しい巨大原発は『建設不可能』か?」(同8月27日付)と報道。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)も「アメリカは大型原子炉を製造できるか?」(11月24日付)と原発の経済合理性に疑問を投じる記事を掲載。小型モジュール炉(SMR)についても「開発途上の未完成技術」と慎重に報じている。メディアとしていずれが信頼に足るのか、言う必要はないだろう。(敬称略)

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