2025年3月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
1967年の創刊以来、鉄道専門誌御三家の一角を占めてきた月刊誌「鉄道ジャーナル」が突然、休刊を発表した。4月21日発売予定の6月号を最後に制作・発行をとりやめる。事実上の廃刊である。キャッチフレーズは「鉄道の将来を考える専門情報誌」。航空機やバスなども取り上げる社会的な視点のルポルタージュに定評があった。67年5月の創刊号は66年の1年間に登場した国鉄と私鉄各社の新車を回顧し、価格は280円だった。
ライバルの「鉄道ピクトリアル」は名前と裏腹に、どちらかというと文字情報が主体。「鉄道ファン」は写真を多く採り入れた構成が基本だ。90年代は3誌が発売される毎月20日頃、大型書店の鉄道書コーナーに愛好家が殺到し買い求めた。1人で3誌を買う猛者も珍しくなかった。96年まで出版業界の売り上げは拡大基調だったが、97年の消費税率引き上げから減少に転じ、さらにデジタル化や少子高齢化という逆風が加わった。2024年に起きた出版社の倒産・休廃業・解散は62件に及ぶ。
鉄道愛好家は相変わらず熱い。NHKがBS1とBSプレミアムを統合した2023年12月1日を挟む1週間のBS録画視聴ランキング(TVガイドWeb集計、関東)で、NHKの「鉄オタ選手権」はバラエティ部門で4位だった。近年は鉄道旅行を楽しむ「乗り鉄」や鉄道写真の「撮り鉄」、走行音などを収録する「音鉄」、鉄道部品を集める「収集鉄」などカテゴリーの細分化が進む。「社会的な視点」が売りの「鉄道ジャーナル」は変化に追随できなかったのではないか。
かつては航空専門誌にも御三家があったが、「航空ジャーナル」は88年に出版元が倒産して消え、「航空情報」は23年に休刊し、今や「航空ファン」のみ。空も鉄路も専門誌が直面する苦境は同じ。「鉄道ピクトリアル」と「鉄道ファン」も安閑とはしていられない。
(松果堂)