連載/『吾輩は烏である』/神経衰弱でいざ勝負!/松田裕之・日本生態学会元会長

2025年3月号 LIFE [シン鳥獣戯画]

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吾輩は嘴太(はしぶと)烏である。嘴細(はしぼそ)烏(がらす)とともに都市部にも棲み、ゴミをあさり、数を増やしてきた。ゴッホが「カラスのいる麦畑」に描いた時代以前から、人を恐れず、人間社会のそばに棲みついてきた。吾輩の近縁種に嘴細烏がいる。よく見ると嘴の太さが違い、一回り小さく、声は吾輩のほうが澄んだ美声である。分布域は嘴細の方が広く、ユーラシア各所にいる。彼らは農村などの開けた場所に住み、吾輩は比較的山林など高さのある環境に多い。かの地に我々嘴太はいないから、ゴッホの絵は嘴細だろう。北海道教育大学の三上修教授らの研究チームも、函館近辺の調査をした際に「秋冬の農耕地帯では、比較的広い範囲でハシボソガラスだけ数十羽がともに採食していた」などと書いている。きっとゴッホを思い出していたに違いない。都市には嘴細はあまりいないとも言われていたが、場 ………

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