ファンケル サプリメントの基幹工場 徹底した品質管理体制で製造

2024年9月号 INFORMATION

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ファンケル美健三島工場

富士山の裾野、東海道新幹線三島駅から車で20分ほどのところにファンケルのサプリメント工場「ファンケル美健三島工場」はある。

健康志向の高まりを受けてファンケルの主力事業であるサプリメントの売上高は2015年から2019年の5年間に1.5倍伸びる生産能力の増強が急務となり2021年に竣工した。

三島工場は、延べ床面積がファンケルグループ最大の3万715平方メートル。1日当たりの生産能力はサプリメントが1085万粒(3.1t)、アルミ袋入りの製品が6万袋、分包が25万5600包。生産品目が「大人のカロリミット」「内脂サポート」など47製品に上るファンケルグループのサプリメント基幹工場だ。

工場内には、1時間に40万錠を6台のカメラを使って全方位から検査する錠剤選別機や、1分間に200包を包装する高速分包機など最新鋭の設備を揃える。夜間の自動運転も可能な錠剤製造装置「打錠機」や無人運転が可能なフォークリフトなど省人化システムも完備している。

優れているのはハード面にとどまらない。三島工場はソフト面でも、品質と安全性の保証のために、「医薬品レベルを目指した管理体制」が構築されている。その構築と適切な運用の監視、是正、未然防止を担っているのは品質保証部門だ。

『管理はデジタル化、最後はヒト』

最後はヒトの目で検査

品質保証部門は、原料の入荷から製品の出荷までの全ての過程において、製品が安全で一定の品質を保つことができる製造環境を整備・維持し、原料選定と製品開発に当たる研究開発部門や、製造と品質管理に当たる生産部門の品質を監査する。その仕組みを担保しているのが「GMP認証」と「FSSC22000認証」だ。

GMPは米国発祥の製品の品質と安全性の確保を目的とした製造管理と品質管理の基準で、医薬品製造では必ず取得しなければならない認証だ。さらに三島工場の製造室と充填室はクリーンルーム設備も導入されている。製造の仕組み及び設備において、非常に高いレベルの製造環境となっていると言える。

品質保証担当の田村佳子さん

GMP認証を取得するには現場におけるGMP教育が重要となる。三島工場の品質管理担当の田村佳子さんによると、直接雇用の従業員、派遣社員、アルバイトなど雇用形態を問わず全員が受講しGMPの考え方を身につけているという。

一方、FSSC22000は食品の安全性を確保するための国際規格だ。GMPが設備、教育を含む生産工程のシステム化に重点を置いているのに対し、食品作りに欠かせない点を強化することに重きを置いている。例えば、衛生管理や異物混入について危害を与える因子を分析し、回避する仕組みを構築することが求められる。三島工場はGMPもFSSC22000も第3者認定機関により認定を受けている。

編集部は、衛生管理や異物混入対策がどのように行われているか、工場の倉庫・入出庫エリアと生産エリアを見学させてもらった。

まず、倉庫の出入り口はダブルシャッターとなっていて、倉庫内が外部環境と直接つながることがないようにし、虫が入るのを防いでいる。倉庫と生産エリアの間にはエアシャワー設備が設置してある。原料を入れた箱などを生産エリアに持ち込む際はエアシャワーを浴びさせ、ゴミ等の異物が生産エリアに入らないようにしている。

人為的な異物混入を防ぐフードディフェンス体制も徹底している。例えば、生産エリアには生体認証装置により立ち入りを許可された者以外入ることができないようにすると同時に入退室管理をしている。生産エリアにはカメラを設置。専用更衣の着用や持ち込み品の管理も行っている。

原料の受け入れではFT―IR(フーリエ変換赤外分光法)装置で受け入れた原料の吸収スペクトルを測り、あらかじめ登録してある標準品の吸収スペクトルと一致するかどうかを見ることで、分子レベルで同等品であることを確認し、間違いを防いでいる。

製品は製造ロット毎に、外観や性状、割れにくさ、溶けやすさ、異物の混入を検査している。微生物の混入の有無は培地に一定時間植えて有害な菌がいないかを確認。分包製品については袋の開封しやすさや密封性をヒトの手と目で確認している。

田村さんは「確実性を高めるため『管理はデジタル化、最後はヒト』の考え方を徹底し、製品チェックは数値の確認だけでなく、ヒトの目による確認も行っている」と話す。

三島工場はまた、品質管理体制の強化を目的に販売活動を通じて得たお客様の声の共有や製品の定期的な抜き取り検査を実施して、品質と安全性を保証している。更に「改善表彰制度」を設け、品質や安全面はもちろんのこと、生産性向上も加えた改善活動も全社的に取り組んでいる。三島工場の前工場長で現在群馬工場の工場長の小島俊介さんは、「実施した良い改善についてタイムリーに表彰することにより、改善意識の醸成を図っています」と話す。年1回開催の「改善コンテスト」から3カ月に1度の「改善表彰制度」へと“改善活動を改善”したことも興味深い。

「見学コース」をリニューアル

見学コースでは「タンクリーンくん」がお出迎え

実は三島工場は一般の人も見学することができる。しかも見学コースは今年7月24日にリニューアルされたばかりだ。三島工場オリジナルキャラクターの「タンクリーンくん」が随所にいて、医薬品製造レベルのクリーンな環境でサプリメントを製造していることをやさしく説明する。ファンケルのサプリメントの特徴である「体内効率設計」を視覚的に体験できる実験コーナーも新設された。

見学コースのリニューアルには地元地域からの雇用を増やしたいという思いも詰まっているという。地元地域の団体や学生を対象にした見学会も実施する予定。三島工場充填グループ課長の大沼宏輔さんは「良い商品は良い人から」と話す。見学ツアーの所要時間は60分で無料。https://www.fancl.jp/factory/mishima/から予約を申し込める。

(取材・構成/編集部)

   

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