2024年8月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
東京ガーデンシアターで開催されたソフトバンクグループの株主総会(6月21日)
6月下旬、いくつかの3月決算企業の株主総会に出席した。活発な質疑で2時間を超えた大企業があった一方、30分ちょっとで終了してしまう中堅企業もみられた。温度センサー最大手の芝浦電子は、出席した株主が15人前後にとどまり質問は2人からしか出なかった。所要時間は37分。ステンレス専業大手の日本冶金工業の質問者は3人で、39分で終わってしまった。
かつては「シャンシャン総会」をよしとする風潮があり、9割以上の株主総会は6月末の1日に集中していた。昨今は企業の姿勢が変化し開催日も分散してきた。東京証券取引所によると、今年最も集中したのは6月27日で29.5%。それでも何社もの株主になっていると、バッティングしてしまう。
オンラインで参加できる「バーチャル総会」の実施企業が増えてきたのは、遠隔地に住む株主にとってはありがたい。総会の様子を翌日以降にウェブサイトで見られる「事後配信」を取り入れている企業もある。長く株主をしている人の質問には参考になるものが多い。
ただ、東ソーは肝心の質疑応答が抜けていた。総務部の担当者は「株主の声とか姿が映りこむことがあり、個人情報保護の観点で以前からカットしている」と説明するが、残念だった。
質疑の希望者が多いと、会社によっては途中で打ち切ってしまう。例えばホンダは昨年10月の株式分割で株主が1.6倍に増え、そもそも総会に出席するのに事前の申請が必要だった。そして総会開始から1時間50分たったところで質疑を打ち切った。1年に1度しかない機会なのだから、質問が尽きるまで続けてもよかったのではないか。
日本の株価は堅調で、日経平均、東証株価指数(TOPIX)とも7月に入って史上最高値を更新している。この流れを断ち切らないため、企業にはより株主フレンドリーな対応を期待したい。
(ガルテナー)