連載コラム:「某月風紋」

2024年6月号 連載 [コラム:「某月風紋」]

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念願のヒマラヤへついに行ってきた。エベレスト街道の玄関口、ネパールのルクラから片道約50km。毎日少しずつ高度を上げ、エベレスト・ベースキャンプで日本の公募登山隊の人たちにあいさつし、最後は標高5545mのカラ・パタールに登り、エベレストやヌプツェを間近に見た。

驚いたのは、トレッカーの多さと、ロッジの快適性だった。欧米の若者を中心に、インドや中国など世界中から人が集まっているように見えた。残念ながら日本人は少なかった。1ドル=150円台の円安が、海外渡航をためらわせているのは間違いない。

ロッジはすべて個室で、ツインの1人利用が最も多かった。壁は薄いから隣の部屋の声は筒抜けだが、日本の山小屋を思えば天国のようだった。食事もいわゆるカレーのほか、ピザ、パスタ、ヌードル、炒飯など多彩なメニューから自由に選ぶことができる。混雑時には提供に時間がかかるが、原則として自分のガイドが食事の1時間程前に注文を取ってくれるから、ほぼストレスなし。夕方5時に食事を強制されたりはしない。

標高4500m超に建つロッジを除けば水もしっかり確保され、有料ながらシャワーを浴びることができる。日本の古いタイプのキッチンについているような給湯器から40℃超のお湯が出る。もちろん、石鹸もシャンプーも歯磨き粉も自由に使える。

もうひとつうれしかったのは、ロッジでも道端でもごみ箱が設置され、捨てることができたことだ。私をガイドしてくれたシェルパ族のアン・セリンさんによると「国立公園の入山料(約3500円)を道の整備やゴミの回収に充てている」とのことだった。

ただ、エベレスト街道の快適さとは裏腹に、首都カトマンズ近郊の道路などインフラは総じて劣悪で、暮らしていくのは大変そうだった。

(ガルテナー)

   

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