2023年12月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
平時に戻り、賑わいを取り戻した夏山シーズンが終わった。混雑時の山小屋は1枚の布団を2人で分け合うこともあると聞いていたから、これまで泊まりは避けてきた。だが、日帰りできる主だった山は登り尽くし、やむなく「挑戦」した。
コロナ禍を経て山小屋のサービスは改善している。定員を減らし事前予約が基本となった。宿泊した南アルプス・三伏峠小屋と北アルプス・穂高岳山荘はウェブでの予約やクレジットカード決済が可能。水洗トイレを備え、スマホの充電もできた。
宿泊料金は2食付きが1万3000円前後とコロナ前と比べ4割上がっていた。物価が上昇しているから致し方ないが、サービスが価格に見合っているとは言い難い。三伏峠小屋はシーツ、布団カバーともなく、食事のおかずは冷めていた。穂高岳山荘は隣の人との間に簡易的な仕切りが設置され使い捨てシーツも用意してあったが、空いていても狭い部屋に大勢押し込まれた。大半の小屋で夕食は5時スタート。麓でこの時間に食事をする人はまずいない。
山好きな経済学者の友人はもっと手厳しい。「個室がほとんどなく、食事はヨーロッパの山小屋と比較にならず、石鹸や歯磨き粉は使えなかったりする。シャワーもなく、物陰で裸になって冷たい水で体をふく」
山小屋の経営は大変だろうが、北アルプスの剱岳に近い剣山荘にはシャワーがある。小屋の関係者は「合併浄化槽があり、歯磨き粉も使って構わない」と話す。山でもその気になればできるのだ。
友人は「日本の山はすばらしいのに、前近代的な体育会系の文化に支配され残念」とも話していた。まずは定員を減らして個室を増やし、最低でも1人2畳程度は確保してほしい。浄化槽を整備し温水洗浄便座もあるとうれしい。資金がなければ、クラウドファンディングで募ったらどうか。
(ガルテナー)