2023年9月号 連載
8月号、田中俊一氏の「『消えぬ風評』という悪魔」を読んだ。氏は、非科学的な過剰規制が悪質なデマの根源と指摘する。「未だに規制をかけているのはいまなお放射能に汚染されていることの証拠」といった「誤った風評」を招く原因となっている。克服するには、「過剰な食品流通規制の見直しこそが急務」と国と県の政策の現状を断罪する。氏の文章からひしひしと伝わってくるのは、放射線や放射能についての風評によって、復興が足踏みしたままであることへの忸怩たる思いと福島への愛である。FACTAには書き手がいる。書き手の思いが伝わってくる。それが怒りだったり、忸怩たる思いであったり、今ある現実と書き手の考え、そしてその解決への「思い」が読者の共感を呼ぶ。以前の号の、原発事故後の原発敷地内部で働く労働者のレポート記事では、その作業の内容・実際に担う労働者の現実が述べられていた。新規作業員の募集ビラが配られている場所に赴き、その場所から除染の現実を見つめていた。解決できない思いが心に残った。
杉並区在住 新垣眞樹