立憲民主党代表 泉 健太氏(聞き手/編集長 宮嶋巌)

新しい旗印「生活安全保障」に懸ける思い

2022年6月号 POLITICS [リーダーに聞く!]

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1974年生まれ、47歳。立命館大卒。2003年衆院初当選(京都3区・当選8回)。内閣府大臣政務官、旧国民民主党政調会長、立憲民主党政調会長などを歴任。昨年11月より現職。

――参院選に向け漢字6文字のいかめしい旗印を掲げました。

泉 「安保」といえば日米同盟が浮かびますが、安保というものを国家の立場だけでなく、生活の立場からも検証し、築き上げていくことを印象づけるスローガンです。国家安全保障や経済安全保障、食料安全保障などは、「生活」の観点、即ち命、人権、雇用、環境、物価、衣食住などへの影響を踏まえて立案されるべきです。国民の「生活」こそが安全保障の起点だと訴えます。

――真っ先に取り組む課題は。

泉 連休前に「生活安全保障3本柱」を打ち出しました。第一の柱は「物価高と戦う」。現在、急激な円安と物価高が進んでいます。2013年に政府・日銀が出した共同声明の見直し、ETFの出口戦略など「円安放置のアベノミクスからの脱却」を迫ります。

「ガソリン・小麦の値上がり防止」や「消費税を時限的に5%へ」「最低賃金を段階的に1500円へ」「月1万円の家賃補助」などを実現したい。

――二本目の柱は何ですか。

泉 「教育の無償化」です。人への投資なくして競争力の回復もありえません。

「高等教育・社会人教育の無償化」を進め、特に「デジタル医療環境」分野の人材を育て、未来の生活の安全を保障したいと思います。

――教育無償化の財源は?

泉 我が党が提出した「子ども総合基本法案」なども踏まえ、子ども子育て関連予算を対GDP比3%に引き上げ、「人への投資」の観点から、財源確保の「教育国債」を発行します。

3本目の柱は「着実な安全保障」。近年の安全保障環境の現実を踏まえ、対話外交と、現実的な防衛体制の整備を進めます。

――御党には防衛安保論議を避ける空気がありました。

泉 中国の国防費がこの30年間に42倍になり、ロシアや北朝鮮の日本海での動きが活発になっている。避けるのではなく、新領域(サイバー・宇宙・電磁波)や情報戦などの新たな分野にも対応し、日米の役割分担を前提として「日米拡大抑止協議」を有効に機能させます。

――泉さんはロスジェネ世代。公党の代表としては最も若い。

泉 ゼレンスキーとマクロン両大統領は共に44歳。ニュージーランドとフィンランドの両女性首相は41歳と36歳です。当選8回の私が若いと言われるような日本政界ではダメ。

我が党は今年1月、有識者を交えた「持続可能な社会ビジョン創造委員会」を設け、転換期にある日本が何をめざすのか、長期的・歴史的な視点に立って議論し、一人一人と、日本社会に調和のとれた発展をもたらすビジョン作りを始めました。ジェンダー平等に配慮し、委員は男女同数。参加型、同時多発型の手法も取り入れ、高校生から大ベテランまで対話と熟議を繰り返してきました。

議論の中で私が目を見張ったのは、未来に生きる子々孫々への義務を制度化した英ウェールズの「未来世代責任法」の取り組みです。これにより、政府から未来世代の利益を守る独立したコミッショナーが任命され、公共機関は現在の問題解決のみならず、より長期的な思考に基づく目標の設定と、責任ある行動が求められるようになりました。私はまだ見ぬ未来世代への責任を果たしたい。

我が党が政権の座を摑むまで数回の国政選挙に勝たねばなりませんが、私の初陣となる参院選では「持続可能な社会ビジョン」を世に問い、政権への足がかりにしたく思います。

(聞き手/本誌編集長 宮嶋巌)

   

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