特別寄稿 私が推す「日本一の首長」/三浦博史 選挙プランナー

2期8年で公約8割達成! 無投票3選を果たした境町長。地方創生は首長のヤル気で決まる!

2022年5月号 POLITICS
by 三浦博史(選挙プランナー)

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自治体初の公道での「自動運転バス」実用化

7月完成予定の人工サーフィン施設(完成予定図)

私はこれまで、選挙プランナーとして、国政選挙の他、数多くの首長(知事・市区町村長)選挙にも携わってきた。

また、学生時代から国際交流活動を続けており、国内はもとより海外の様々な都市を歩いてきた。よく「住むとしたらどの国の、どの都市を選びますか?」と聞かれる。

首長選挙に出馬しようとする候補者と面談する際、私が一番重要視している一つも、「この(候補者の)街に自分が住んでみたい」と思えるか否かだ。

私が関わった首長選挙では、亡くなられた石原慎太郎元東京都知事が印象に残る。一見、強面で傲慢そうだが、その素顔は全く逆で、人情味あふれる、「男の美学」を感じさせてくれる本当に素敵な方だった。

最近でいえば、北海道の鈴木直道知事や新潟県の花角英世知事も、「道県民は素晴らしい知事を持って幸せだな」と思わせるに十分な「人間性」と「郷土愛」あふれる知事だ。

そうした中、選挙に関わったわけでもないのに、私が今、「日本一の首長」と敬愛しているのが、茨城県境町の橋本正裕町長(46)だ。

全国初の「自動運転バス」

現在3期目(2月に3選)で、過去3回の町長選は無投票当選、圧勝、無投票当選と、向かうところ敵なしの圧倒的強さだ。抜群の「発想力」「リーダーシップ」「実行力」で、この2期8年の間に数多くの実績を挙げているが、その一例を挙げてみよう。

①全国初の「自動運転バスの運行」/町内に鉄道駅がなく、車が不可欠な町だけに、ずっと住み続けられる町にすべく、全国に先駆けて自動運転バスを導入。

②高速バス路線の開設/東京駅や成田空港への高速バス路線開設により、「誰もが生活の足に困らない町」実現に向け、公共交通の拡充を図っている。

③ふるさと納税/令和2年度の寄付額が約37億4303万円と、人口わずか2万4千人の町ながら、関東1都6県の市町村で4年連続1位(茨城県内6年連続1位)。企業版ふるさと納税でも寄付額全国6位と、町の新しい財源として積極的に「境ブランド」を売り込んでいる。

④財政再建/町長就任時(平成26年度)から令和2年度までの7年連続で借金(地方債残高)を削減(7年で総額約20億円減)。一方、町の貯金は平成26年度の7億1千万円から、令和2年度には32億9千万円に増加(7年で25億8千万円増)。

こうした財政状況の改善により、「小中学校給食費半額、三人目は無料」や、「様々なコロナ対策支援事業」等、様々な施策を実現している。

⑤子育て支援/多くの自治体が「少子化」「人口減少」という課題を抱える中、「子育て支援日本一」をめざし、「中学校のホノルル市姉妹協定」「20歳の学生まで医療費助成」「全小中学校のエアコン完備」「全小中学校の英検受験費用全額補助」「育児用品の購入クーポン(最大3万円)の配布」等、「子育て支援」や「英語教育」に関する様々な支援策を展開。その結果、ここ数年、転入が転出を上回る社会増となり、人口減少は下げ止まり傾向にある(既に世帯数は増加傾向)。

⑥維持管理費ゼロの公共施設/独自の工夫で町の負担を減らし、維持管理費ゼロで公共施設運営を行う「境町モデル」を確立。これは施設運営を事業者に委託し(運営コストも事業者負担)、町は事業者から施設利用料を受け取ることで施設投資を回収するもの(回収後は町の収入に)。

隈研吾氏デザインの蔵をテーマとした食のスポット「茶蔵」

⑦「住民くらし満足度」の向上/「子育て世帯向け移住定住促進住宅」の提供、アメリカを代表するステーキハウス『ウルフギャング』が入る「隈研吾氏デザインの道の駅」「オリンピック基準のホッケー場やテニスコート」「国際大会招致基準を満たすBMXやスケートボード等都市型スポーツ施設」等をオープン。今年は人工サーフィン施設の建設等、町の新たな魅力づくりに日々取り組んでいる。

境町ホッケーフィールドで行われた日本代表とアルゼンチン代表のテストマッチ

さらに、首長選挙において、最近、私が重要視するもう一つのポイントである「郷土の文化・伝統・祭り、エンターテインメントの発信」についても非常に力を入れており、令和元年夏に行われた「利根川大花火大会」では、全国トップクラスの約2万3千発もの花火を打ち上げ、約20万人以上の観客を集めるなど、賑わいと活気ある街づくりにも挑戦している。

「住民くらし満足度」の探求

橋本氏は町長就任にあたり、「境町に生まれ・育ち・住んでよかったと、誇りを持てるまちにするために、若い人たちが帰ってきて働けるまち、3世代で安心して暮らせるまちを創りたい」と述べているが、まさに『住民くらし満足度』の向上を限りなく探求している。

そして、全国の「発展している町・衰退している町」の現状を正確に把握し、先行事例に学びながら、スピード感をもって「境町モデル」として落とし込み、効果を生み出している。できない理由を挙げるのではなく、できるようにするにはどうすればいいかを考え、行動する、まさに「マーケティング戦略」に長けた『起業家町長』といえよう。

このように、これといって特徴もない町だった境町が、橋本町長の誕生と共に劇的に生まれ変わった大きな理由は、橋本町長のヤル気と企画力、そして迅速な決断力と実行力だろう。

あらゆる無駄やコストを見直し(公用車は中古車)、知恵を結集し、実現していく姿は、まさに「自治体のビフォー・アフター」の典型例といえよう。

「少なくとも、こんな町に一度は行ってみたい」。その代表例として今回、境町を取り上げてみた。

私もこの境町で学んだことを、首長選挙をはじめ、様々な選挙戦に活用させていただいている。

皆さんにお伝えしたいことは、「自治体は首長の『力』で、4年間、8年間で大きく変えることができる」ということだ。今後の境町と橋本町長に注目していきたい。

著者プロフィール

三浦博史(みうらひろし)

選挙プランナー

1951年東京都生まれ。慶大法学部卒。安田信託銀行に入行。衆議院議員の公設秘書を務める。1988年、米国国務省個人招聘プログラムにより米国の政治・選挙事情視察。翌年、総合選挙プランニング会社「アスク株式会社」を設立。日本初の「選挙プランナー」として、数多くの国政・首長選挙等を手掛ける。

   

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