連載コラム:「某月風紋」

2021年3月号 連載 [コラム:「某月風紋」]

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東電の社内研修施設「3.11事実と教訓」の入り口

日本海側に大雪をもたらした寒波に、列島は襲われて、電力の供給が逼迫している。電気事業者である9電力の「設備予備率」は軒並み1%に迫った。予備率とは、最大の電力の需要を満たすのに足りる発電能力に対する余裕を表す。通常3%は必要だとされる。予備率がゼロになると、供給のネットワークは「ブラックアウト」、すなわち大停電に陥る。

東日本大震災からまもなく10年を迎えるのを前にして、東京電力福島第1原子力発電所(1F)の「レベル7」のメルトダウンの記憶が蘇る。原発のかなりの部分が停止している。これに替わる風力や太陽光などの自然エネルギーの開発が進んでいないのではないか?

政策工房代表取締役の原英史氏は、こうした「通説」を否定する。「根源的問題が、電力市場の構造だ」と指摘。「売り入札が12月末に突如急減し、その後は売り切れ状態が続いたことだ。……『世界中の電力市場の歴史上、ほぼ初めて』(安田陽・京大特任教授)とされる『市場の機能停止』に陥ったわけだ」

「情報開示は不十分で、大手電力内の取引やLNG在庫などの情報もブラックボックス状態。価格乱高下に対応する仕組みも整備されていなかった」(「JBpress」2月6日)。

世界のエネルギー界は、1Fの事故以降、自然エネルギーを重視し、電力市場を活かす方向に転換した。だが、それはいまだに十分ではない。東電自体が16年にホールディング会社の傘下に、発電と発送、小売り子会社を置く経営形態になった。

FACTAオンライン「号外速報」(2月2日配信)は、東電の全社員約3万人が、延べ約2400回もの研修を経て、1Fの事故の記憶と記録を蓄積していた事実を報じている。

「事実と教訓」の研修施設が蓄積してきた、膨大なデータベースから、世界が学ぶべきことは限りない。

   

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