東京都医師会副会長 ⻆田 徹氏

「第2波」に備え高齢者施設を「逆隔離」せよ

2020年7月号 LIFE [キーマンに聞く!]

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⻆田 徹氏

⻆田 徹氏(かくた とおる)

東京都医師会副会長

1980年 東京医科大学卒業、米カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校留学。91年 ⻆田外科消化器科医院開設。2005年三鷹市医師会会長。15年より現職。自治体初のPCRセンター開設に奔走。

――東京都医師会の公衆衛生担当副会長として「PCRセンター」の開設に奔走されました。

⻆田 4月上旬、1日当たりの感染者数が200人に迫り、感染源が不明な人が8割を超え、感染爆発の懸念が高まりました。従来の保健所経由の検査では追いつかないため、都の区市町村と地元医師会が組み、かかりつけ医の紹介を受けた患者さんが検査を受けられるPCRセンターの開設に取り組みました。

――どれぐらいできましたか。

⻆田 5月末時点で23区に24カ所、多摩地区に12カ所開設し、1日に計500人程度の検査能力があります。いちばん大きい新宿は4ラインで1日に200人の検査ができますが、最近は受診者が減り、1日40人程度の検査にとどまっています。

――日本が感染爆発を免れたのは、なぜでしょうか。

⻆田 飛沫による「クラスター感染」を防ぐ上でマスクが効いたと思います。清潔好きな国民性や、誰もが医療を受けられる国民皆保険が奏功しました。

――感染が落ち着いた現在、医療現場が抱える悩みは?

⻆田 救急車で運ばれてきた発熱患者が新型コロナ感染者か否かわからないため、入院先が決まらないことです。長い綿棒で鼻奥の粘液を拭い取り、分析機器にかけて判定するPCRは手間と時間がかかります。最近、ウイルス特有のたんぱく質と反応する「抗原検査キット」が登場し、PCRより精度は落ちるけれど、30分程度で結果が出るため非常に役立っています。24時間体制で患者を受け入れる二次救急指定病院全てに検査キットを行き渡らせるべきです。

――「抗体検査」はどうですか。

⻆田 人口の何%ぐらいが免疫を持っているか、抗体検査で過去の感染状況がわかると有益なのですが、東京都医師会内で3種類の検査キットの性能を試してみましたが、結果はまちまち。どれを信用していいのか、難しい状況でした。

――「第2波」の対策は、どこに重点を置くべきですか。

⻆田 我が国が医療崩壊しなかったのは感染者の少なさに加え、重症者・死亡者が少なかったから。重症化しやすいお年寄りの感染者が全体の20%以下だったから持ちこたえたのです。それでも重症者・死亡者全体の85%は60歳以上でした。

――欧州では死亡者の半数が高齢者施設の例もあります。

⻆田 我が国でも高齢者施設

で集団感染が出ていますが、そんなに多くない。いったん中へ持ち込んだら全滅しかねないリスクを抱えながら、介護の現場で働く皆さんは、本当によく頑張ったと思います。高齢者施設ではワクチン接種が可能になるまで面会制限などの「逆隔離」を徹底することです。それしかお年寄りを守る手立てがないから。そこで働く皆さんには無症状であっても、必要に応じて速やかに検査を実施すべきです。ワクチンは来年以降でしょうが、重症化を防ぐ治療薬候補は出てきました。膵炎薬の「フサン」や「フオイパン」、ぜんそく薬の「オルベスコ」などです。ワクチンが完成し、重症化しない治療法ができれば、新型コロナもありきたりの「はやりかぜ」となり、人類と穏やかに「共生」していくことになります。

(聞き手/本誌発行人 宮嶋巌)

   

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