伊藤忠商事「総合商社」パビリオン キッザニアで英語のプレゼン体験

19年4月からキッザニア東京に加わった新たなパビリオン「総合商社」。子どもたちが国際的な仕事を体験できる貴重な30分。

2020年1月号 INFORMATION

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たくさんのパビリオンが並ぶキッザニア東京

3歳から15歳までの子どもたちが、楽しみながらさまざまな仕事や社会のしくみを体験できる職業・社会体験施設、「キッザニア東京」。2006年に東京・豊洲にオープンして以来、19年4月までに約1100万人の親子が訪れた、言わずと知れた人気施設だ。スポンサー企業が提供する60あまりのパビリオンがあり、体験できる仕事やサービスは消防士やピザ職人、新聞記者、パイロットなど、約100種類にも及ぶ。

19年から、そこに新たな職業が加わった。総合商社で働く「商社パーソン」である。パビリオンを提供するのは伊藤忠商事。12年からキッザニア東京のスポンサーとして環境がテーマのパビリオン「エコショップ」を設けていたが、運営する中で「商社の仕事を体験できるところを」という要望を受け、衣替え。4月19日に「総合商社」パビリオンとして新規オープンした。

米国のデパートに日本製バッグ提案

「総合商社」パビリオンの外観

平日の午前中、「総合商社」パビリオンを訪ねた。入口にある飛行機の下を通り、キッザニア内に入ると、広がっているのは子どもが主役の別世界の街だ。大勢の子どもたちがあちこちで楽しそうに「仕事」をしている。商社パーソンを体験するアクティビティの推奨年齢は5歳以上で、1回で5人ずつ、所要時間は30分。ちょうど校外学習の一環で訪れた5人の小学生たちが、パビリオンのユニフォームを着て、体験に臨むところだった。ユニフォームはネクタイにベストもついた三揃い風のジャケット。だが素材は明るい色のデニムで、脱スーツ・デーを掲げる伊藤忠らしさも感じ取れる。

海外のお客様にデニムバッグのプレゼンテーションをする子どもたち

商社パーソン体験のアクティビティがスタートすると、まず進行役のスタッフが総合商社の仕事を紹介。総合商社で扱うものは多岐にわたり、世界中に取引先があること、売り手・買い手・世間のみんなが満足することを「三方よし」ということなどを学ぶ。一通り学んだら、いよいよ子どもたちの出番だ。「今から皆さんは、日本製のよさを海外の人に伝えて日本の商品を売る仕事をします。実は今、日本の製品がほしいという依頼のメールが来ています」

アメリカのデパートの仕入れ担当者、ジョン・スミス氏が「日本製のデニムのバッグでいいものがあれば提案してほしい」と依頼してきたという。子どもたちは、テレビ電話をかけてきたスミス氏と挨拶を交わし、伊藤忠のグループ企業、エドウインのデニム製バッグを提案することに。バッグの品質や環境への配慮について勉強し、どんなところをスミス氏にアピールすればよいかを考えた上で、5人はプレゼン用のカードをもとに、スミス氏にバッグについて英語でプレゼンテーションする。

スクリーンに映るスミス氏とのやりとりは、5人とも緊張して真剣そのものの面持ち。プレゼンが成功し、スミス氏が「ワンダフル、サンプルを送ってほしい」と話すと、みなほっとした表情になった。

体験を終えた子どもたちが、生き生きと感想を語ってくれた。「外国の人と初めて話して楽しかった」「英語をもうちょっと得意にしたいです」「プレゼンをやれるというので、ここにきました。やってみると英語が難しかったです。プレゼンが将来に役立てばいいなと思います」――それぞれ有意義な体験ができたようだ。

プレゼンするのはエドウインのデニムバッグ。とても丈夫で、「日本製の印」としてつけた赤ボタンがポイント

終了後は、プレゼンで提案したバッグとプレゼンシートを成果物として持ち帰ることができる。「使いやすそうなバッグだと思います」嬉しそうに女の子が笑った。

英語のプレゼンシートは伊藤忠商事で実際に使っているフォーマットを使用

「三方よし」の精神を伝える

社会貢献活動を行う中でも、特に次世代育成に力を入れる伊藤忠商事。新パビリオンの提供には、「総合商社の仕事を通して子どもたちに大きなグローバリズムを体験してもらい、交渉力やプレゼンテーション能力のある国際人になってほしい」との思いがあったという。ただ、総合商社の仕事は幅が広く、さまざまな側面がある。パビリオンのオープンに至るまでには、どんな内容にするか、伊藤忠商事のサステナビリティ推進室とキッザニア東京の担当者がアイディアを絞り、折衝を重ねた。

英語でのプレゼンは「当初、小さい子には難しいので、日本語にしてあげた方がいいかなと心配した」と推進室の吉田あずささんは話す。しかし、逆にキッザニア側に「英語が飛び交う雰囲気を感じ取ってもらいたい」と提案され、結果として子どもたちも大いに興味を持つパビリオンとなった。

「取引がうまくいき、自分だけでなく、デパートにも世の中にも良い『三方よし』になりましたね」アクティビティの最後には、スタッフが子どもたちにそう話す場面もあった。仕事の面白さだけでなく、社会とのつながりを学ぶ場でもあるキッザニア。ここで体験した仕事への姿勢は、やがて子どもたちがリアルの世界で自分の夢を切り拓いていくきっかけになるかもしれない。

(取材・構成/編集委員 上野真理子)

   

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