e-Gle(イーグル)代表取締役社長 清水 浩

EVの技術を世界中に届ける

2020年1月号 BUSINESS [ヴィジョナリーに聞く!]

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清水  浩氏

清水 浩氏(しみず ひろし)

e-Gle(イーグル)代表取締役社長

1947年仙台市生まれ、72歳。東北大大学院修了後、国立公害研究所に入る。97年に慶應大学環境情報学部教授に。2009年SIM―Driveを設立。13年慶大を定年退職し、9月e-Gleを設立し代表取締役社長に就任。

――変わった構造ですね。

清水 車輪の中にモーターを組み込みました。インホイールモーターと呼びます。モーターと車輪の間にはギアとかドライブシャフトとかがなく直結しているので、エネルギーロスが少なく、作るのも難しくないので安くでき、車室空間も広げられます。私が電気自動車(EV)に取り組み始めた40年前は、100人中100人が「EVは電池がダメだからダメだ」と言っていました。私は逆転の発想で、電池はその時々で最もいいのを使い、大事なのは走行のために使うエネルギーを限りなくゼロにすることで性能を上げることだと考えこの仕組みを開発しました。加えて、電池は床下で車体を支えるフレームの中に収める構造としました。その結果、床から上は走るために必要な部品はなくなり、さらに広い車室となります。重い電池が床下に来るので車体重心がこれまでの車に比べて約10㎝も低く、安定した走りにもなります。

――車は全部EVに?

清水 私はこれまでに15台、それぞれ当時としては先進的なEVの開発に関与してきましたが、大手自動車メーカーは大々的にやってきませんでした。それでもこの先、EVの時代になると思います。日本ではEVではなく、燃料電池車に置き換わるとの意見がありますが、これはエネルギー効率が悪く、水素充塡が大変で、技術が難しいので実用になるかどうかは懐疑的です。

――日本メーカーのEVシフトへの乗り遅れが心配です。

清水 日本は技術ポテンシャルが世界一ですから、早くEVに転換することが日本の産業の将来にとって間違いのない選択になります。政策と自動車メーカーの意思決定を急がないと、中国と欧州がどんどん追いついてきて、日本の優位性が失われてしまいます。ここに大きな危機意識を持っています。EVは世界との競争の時代です。

――e-Gleの戦略は。

清水 車がEVになると、世界中の国がそれぞれの地域に合った新しい自動車メーカーを育てるようになる、と考えています。EVは内燃機関がなく簡単に作れるからです。e-Gleはこうした各国で生まれる自動車メーカーに柔軟な発想をもとに独自コンセプトの技術を教え、かつ、育てる会社を目指しています。インホイールモーターを含め、すべての要素技術と車体設計、製造技術までも教える会社です。それが可能になるのは、e-Gleの社内にずば抜けた技術者がいることと、周りに50を超す優秀な技術開発力と製造能力を持った会社があるためです。このような会社と、そこで働く技術者の人々はまさに日本の宝です。

(聞き手/本誌編集人 宮﨑知己)

   

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