2019年10月号 BUSINESS [インサイド]
人懐っこく、ファンが多かった小河正義さん
1人の故ジャーナリストの遺志を継ぎ、2人の若手ジャーナリストを応援する「ツー・バイ・ワン」の私的基金が10月末まで助成先を募集している。元日本経済新聞編集委員の故小河(おごう)正義氏を顕彰する「ジャーナリスト応援基金」だ。一昨年に74歳で亡くなった小河氏は、元航空管制官という異色の経歴で、ロシアの政治家や米トップ企業CEO、複数国の諜報機関幹部等にも人脈を持つ一方、人懐っこい性格で知られた。
ジャーナリスト個人を評価・支援する賞や基金としては現在、日本記者クラブ賞、平和・協同ジャーナリスト基金賞、日本ジャーナリスト会議JCJ賞などが知られる。「小河基金」は手作りだが、ジャーナリスト自身が、1人でも多くの有為なジャーナリストを個人として支えたいとの思いが根底にある。
基金の原資は外部の寄付金ではなく、小河氏の遺志による個人資金。助成金も、今後の活動支援を優先して2人に各30万円を提供するという。「今の若手は」と小言を言う前に、「今の若手」の実力を高める一助になろうという趣旨だ。
基金設立の背景には、マスメディアの画一化、権力への迎合、フェイクニュースの蔓延等、内外で広がるジャーナリズム危機への認識がある。新聞やテレビがネット、SNSなどの情報量に凌駕されるだけでなく、玉石混合のネット情報の洪水で、情報の質も揺らいでいる。
フェイクではない、信頼される情報を流すには、質の高いジャーナリストを増やす以外にない。FACTAに「怖い記事」を発表する記者を増やしたいというほうがわかり易いだろうか。「ツー・バイ・ワン」の基金作りは、一定の資金を残せば、誰でも簡単にできる。古手の元ジャーナリストの追随が期待される。審査員は元日本航空取締役の松尾芳郎氏、元日本経済新聞論説委員の柴崎信三氏、医療ジャーナリストの木村良一氏(元産経新聞論説委員)らが顔を揃える。応募書類は小河氏が立ち上げたTOKYO EXPRESS http://tokyoexpress.info/まで。10月末まで受け付ける。