パンソリューションテクノロジーズ 代表取締役社長 松島 悟

太陽電池「測定」で品質高める

2019年7月号 BUSINESS [ヴィジョナリーに聞く!]

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松島  悟氏

松島 悟氏(まつしま さとる)

パンソリューションテクノロジーズ 代表取締役社長

1977年群馬県生まれ、42歳。1999年青森大学工学部を卒業し、半導体検査装置メーカーやインゴットメーカーに勤務。16年に東北大学金属材料研究所の研究員になり、17年9月に同社を設立。

――太陽電池は歩留まりが低くて大変だと言われています。

松島 シリコン型太陽電池は、まず豆腐型のシリコンのインゴットを薄くスライスして、ウエハーにします。そのウエハーに化学処理を施してセルを作り、これを並べて電池モジュールにします。難しい技術のひとつにインゴット作りがあります。溶かしたシリコンがインゴットになる際、分子、原子レベルの欠陥が入ることがあり、メーカーへのヒアリングで、それが原因の不良が多く発生し、経営を圧迫していることがわかりました。一番の問題は、インゴットの品質の良し悪しが、最終製品に近いセルの形にしてみるまで分からないことです。セルの製造にはコストがかかっていますし、どの工程で問題があったかも分からずじまいになり、メーカー間、部門間のトラブルの原因になっています。

――ウエハーの段階で品質検査をしないのですか。

松島 検査しています。ただし従来方法はウエハーにレーザー光を一定時間当て、電子がエネルギーを取り出せる位置にどのくらいの時間とどまるかを測定し、数百カ所の平均値を性能の値として示します。ピュアな半導体用のウエハーの検査ならそれでよいのですが、太陽電池用のものは電気を取り出しやすくするためにリンやホウ素などを混ぜて作っています。一方、新旧の乾電池を混ぜて使うとダメになることから分かるように、太陽電池は混ぜ物があってもムラは禁物なのです。そこで我々は「高速電流可変抵抗測定法」を考え出しました。ウエハーに独自に調整した電流を可変させながら抵抗率を測り、抵抗率の変化量から取り出せる電子とホール(正孔)の数そのものを数える方法です。これだと不良品をゼロにできます。

――すごい発想です。

松島 インゴットメーカーに勤めている時、良いものだけをお客さんに届けようと、東北大学金属材料研究所にいた藩伍根博士に評価をお願いしていました。その後、日本から太陽電池産業は消えていくのですが、精度の高いこの品質測定の原石があれば世界の太陽電池メーカーの技術力を引き上げられると思い、私も藩さんと同じ研究所に入り、大学のベンチャー企業立ち上げプログラムに応募し、会社を立ち上げました。

――今後の展開は。

松島 電車や電気自動車、発電所などで近い将来多くの需要が見込まれる、炭化ケイ素や窒化ガリウムの結晶を基板とするパワー半導体の測定装置を作ろうと考えています。パワー半導体は大電流が結晶の深いところを流れます。我々のやり方は、深いところまで調べることができるので、応用が利きます。

(聞き手/本誌編集人 宮﨑知己)

   

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