読者の声

2019年3月号 連載

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8年前、誰もが誓った「忘れない」は変容したらしい。一昨年9月、衆院原子力特別委で参考人として私は国会事故調が求めた「(提言の)実施計画」策定公表を改めて求めた。昨年末同じ場で15カ月間何ら議論がないことを確認した。国会図書館に保管された事故調資料の開示も忘れたか。再発防止への「起点」に立つことなく「国会事故調は過去だ」と開き直る「選良」。彼らを「代表」と戴く私たち。今や「忘れない」は年中行事として費消される訳知り顔の「玩具」と堕し、日常の至るところに溢れる事故の根源的原因「思考停止」は不祥事として噴出する。

2020年を目前にいま商業メディアでは「サムライ」という言葉が氾濫する。「サムライ」とは湊川の大楠公のように永劫回帰の中で正しい判断を志す晴朗な覚悟を持つ者だ。自己満足で塗り固めた殻に閉じこもる者ではない。私たちの自慰の果てに子どもたちは「サムライ」を「愛する国」をこの国土に見出せるだろうか? お遊戯の時は過ぎた。「忘れない」の先へ。未来に誇れる「今」を作れるのは「今」を生きる私たちだ。貴誌の「サムライ」魂に期待する。

元国会事故調 調査統括補佐 石橋哲

   

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