編集後記「風蕭蕭」 大久保好男・民放連会長の会見から

2018年9月号 連載
by 知

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大久保好男・日本民間放送連盟会長

「ネットへの広告出稿を見直すという企業も出始めております。私たちが放送の立場を向上させるためにはネットとの違いをもっと明確にしていく。それが有効な手段だと思っているところです。良い番組を流せば視聴者には必ずテレビを見てもらえる。その一つの例はサッカーのロシア・ワールドカップだったのではないでしょうか」(大久保好男・日本民間放送連盟会長、7月23日、日本記者クラブでの記者会見で)

「ネットの情報は信頼性に欠ける」「青少年に悪影響を与えかねない不健全な情報がネットを通じて氾濫している状況がある」とネットを散々にディスった後に続く発言。

「NNNドキュメント」など出身局の立派な報道番組の中から「良い番組」が示されるのかと思いきや、それは当方の完全なる思い違い。会長が挙げたのは、バカ高い放映権料に見合う企業広告が得られる巨大スポーツイベント中継だった。

民放を観るにもNHKへの支払いが必要という疑似課金モデルなのに、自分たちを純粋広告モデルと信じているのか、企業に広告媒体として選んでもらえるか否かを良し悪しの絶対的基準としている。業界のトップがこれでは、企業が安心して広告を出せるのが良い番組との指向はますます強まる。自民党総裁選を前に「国会議員によるLGBTは生産性がない発言」「7人死刑前夜の赤坂自民亭開催」「翁長沖縄県知事の死去」など安倍政権が不利になるネタが次から次へとスルーされていくのも合点がいく。

超巨大スポーツイベント「東京オリンピック2020」に向けて、無難系芸能人起用の情報番組やクイズ番組、必ず解決する刑事ドラマ、健康長寿番組、旅・グルメ番組が幅を利かせるのは目に見えている。

偏りが過ぎれば飽きる。視聴者を退屈にさせて、チャンネル数が無限で見せ方も多彩なネット媒体に勝てるはずはない。

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