社員総出でおもてなし ファンケル「開かれた株主総会」

株主の6%が集まる年に一度のファンケルの祭典。池森オーナーの広告倍増戦略でV字回復の快挙。

2018年8月号 INFORMATION

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雨のなか総会に訪れた株主たち

株主総会シーズンのピークを避けた6月23日(土)、「横浜アリーナ」でファンケル第38期(2017年度)定時株主総会が開かれた。JR新横浜駅から歩いて5分。そぼ降る雨の中、会場に向かう株主の足取りは軽い。業績がV字回復し、この1年で株価が2倍近くに跳ね上がったからだ。

売上低迷を打開すべく創業者の池森賢二会長(81歳)が10年ぶりに経営復帰したのは13年のこと。「10倍のスピードでファンケルらしさを取り戻す」と宣言し、構造改革に着手。14年、広告費を倍増して売上を伸ばす大勝負に出た。販売チャネルが通販から直営店、コンビニ、薬局へと拡大するなか、国内最速で受理された機能性表示食品「えんきん」のCMが大ヒット。インバウンドの追い風も受け、化粧品・健康食品ともに売上が伸長。17年度は過去最高売上を記録した。歴史的なV字回復を祝うこの日、議決権を保有する7万6287名のうち4721名(同伴者を入れて5207名)もの株主が来場した。

ユニークな「ファン参加型」総会

株主と記念撮影する池森賢二会長

「ビューティーブーケ」セットの販売風景

「内脂サポート」の実演風景

ファンケルの株主総会の特徴は「株主(ファン)参加型」であるところで、かねて高い出席率を誇る。1998年の上場以来「開かれた株主総会」を掲げ、集中日を避けて土日に開催。個人株主が参加しやすく、家族で楽しめる雰囲気づくりに注力してきたという。株主にはファンケル商品を長年愛用するファンも多く、「池森(会長)のメッセージを毎年楽しみに遠方から足を運ばれる方もおられます」(広報グループ課長の三澤敬之氏)。

総会開始は13時からだが受付は11時。早く到着した株主たちは、総会会場に併設された「懇親会会場」へと足早に向かう。その一角で、恒例の「特別割引セール」が始まるからだ。美白スキンケア「無添加ホワイトニング」、マチュア世代向け化粧品「ビューティーブーケ」、劇的な復活を遂げたアテニア化粧品の「オイルクレンジング&エイジングケア」、アラサー世代向け新スキンケアブランド「AND MIRAIセット」、「青汁セット」、「発芽米セット」、「メタボ対策セット」――。

17種類ものセットが「優待価格」で提供され、たくさんのテーブルに山積みの商品が、飛ぶように売れてゆく。この日も総会前に千人を超える人が買い物を楽しみ、大半のセットが完売となった。ちなみに帰りのお土産も、ロングセラーの看板商品「マイルドクレンジングオイル」、発芽玄米の「グラノーラ」、「ディープチャージコラーゲン」などと豪華である。

セール会場を出て、事業別に設けられたブースを歩いてみる。主力商品の紹介のほか、血管年齢チェックや骨密度診断、メイクのお試しなど対面カウンセリングも受けられる。さまざまな機材を使ったデモンストレーションなど趣向を凝らした展示は、見ごたえ十分だ。

化粧品ブースでは、白のジャケットに身を包んだ女性社員たちが洗顔フォームの泡立て方を実演したり、商品のPRに奮闘していた。「新作のルージュを試してみませんか」と、筆者に口紅を塗ってくれた社員は入社2年目。ふだんは店頭に立たず、商品開発を担当する。「この商品も担当しています。今日は株主さんから生の感想を伺えて収穫がありました」と、潑剌とした笑顔が印象に残った。

健康食品のブースでは「カロリミット」「えんきん」など話題の商品がずらり。なかでも一押しの機能性表示食品「内脂サポート」の説明には大きな人だかりができていた。ファンケル総合研究所で開発を担当した研究者が、実験室さながら白衣姿で登場。生きたビフィズス菌を胃酸から守り、腸まで届かせるファンケル独自の製法を実演し、鋭い質問の数々に答えていた。

総会後に役員を囲む「対話の輪」

株主総会は、13時にスタート。手話通訳士を配置した議事進行のもと、島田和幸社長による事業報告、決議と質疑応答が行われた。株主の質問は「第2期中期経営計画における海外戦略について」「直営店舗のインバウンド需要の状況」「海外事業の強化に伴う業績への影響」など、海外戦略に関するものが中心。「池森会長からV字回復へのコメントを」というものもあった。

総会が終わると、懇親会会場に再び株主たちが殺到する。そこに、ほっとした表情の役員たちが登場し、池森会長や宮島副会長、島田社長らを囲んだ対話の輪ができていった。

「(V字回復は)私の手腕ではありません」「インバウンドの恩恵に甘えていられない。中国では健康への関心が高まっている。本当の勝負はこれからです」。そう語る池森会長に「株は持ち続けます。いや、買い増しますよ!」「頑張ってくださいね」と、株主からエールが相次いだ。400人以上の社員総出で作り上げたという総会・懇親会。そこには全社一丸でV字回復を勝ち取った喜びが溢れていた。

(取材・構成/編集部 和田紀央)

   

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