OB、OGが立ち上がり田中理事長を辞めさせよう
2018年8月号
POLITICS [キーマンに聞く!]
1930年生まれ。日大医学部卒。医学博士。フルブライト奨学研究員として渡米。帰国後、日大教授、医学部長を経て1996年~05年日大総長。日本で初めて冠動脈バイパス手術を成功させた心臓外科の権威である。
――第三者委員会が、日大アメフト部の内田正人前監督らの「反則指示」を認定しました。
瀬在 部員とスタッフ計120人のアンケート調査によると、反則行為を犯した学生と前監督らの発言の食い違いについて、前監督らが正しいと答えた人は皆無でした。おまけにコーチも務めていた理事の井ノ口忠男氏と本部の職員が、学生に「口封じ」の圧力をかけたという。母校の教職員が学生を守らず、自分たちの保身と組織防衛に走るなんて――。恥ずかしさと怒りがこみあげてきました。唯一の救いは20歳になったばかりの学生が、多くの報道陣の前で正々堂々と勇気をもって「真実」を語り、何度も謝罪し、アメフトを断念すると語ったこと。涙が溢れるほど感動した。OBの誰もが、彼の姿を誇りに思ったはずです。
――一連の不祥事の最高責任者は、大塚吉兵衛学長でしょうか。
瀬在 いや、田中(英壽)理事長の下で「総長」から「学長」に格下げされた大塚君は、理事長に付き従う身分になった。一方、内田前監督を理事長に次ぐ常務理事(兼保健体育審議会事務局長)に据え、井ノ口氏を理事に抜擢したのは田中君です。その結果、大学全体のガバナンスが機能不全に陥り、その事後対応のまずさは、教学のトップでもある田中君の判断ミスによるものです。さらに渦中の理事長がパチンコで遊ぶ姿が、週刊誌で暴露された。そこには大学トップとして責任感も反省のかけらもない。しかも、いまだに社会や学生・保護者・教職員に対する説明責任を果たさず、逃げ回っているように見えます。
――教職員組合が田中理事長の辞任を含む大学上層部の「解体的出直し」を要求しています。
瀬在 要求書に賛同する教職員、卒業生、保護者の署名が7千を超えたそうです。これまでも学内に「田中批判」はありましたが、今回は社会問題化しており、そのうねりが高まるばかりです。
――しかし、最高意思決定機関である理事会は動こうとしません。
瀬在 「田中独裁」が10年も続き「イエスマン」ばかりになってしまったから。私が総長時代も田中君(当時常務理事)には黒い噂が付きまとった。弁護士6人に依頼して、田中君を自宅待機にし、業者との金銭授受や裏社会との交際に的を絞った特別調査委員会を作り、報告書をまとめ、次の執行部に引き継いだが、ウヤムヤに終わった。当時、脅迫状と実弾が自宅に郵送され、警察から身辺警護の指導を受けました。理事が押し黙るのは報復が怖いからです。
――田中理事長は90歳まで辞めないとそうです。
瀬在 とんでもない。最近のオープンカレッジの参加者が、昨年の6割減の学部があり、来年の受験生はどこまで減るか、想像もつかない。国と地方公共団体からの補助金も大幅に削られるでしょう。そのしわ寄せが、日大で学ぶ7万人もの学生に及ぶのです。母校が信頼を回復するには田中君だけでなく、心ある理事を除き全員を交代させるぐらいの荒療治が必要かもしれない。解体的出直しは、各界で活躍するOB、OGが立ち上がり、日大の社会的な信用とプライドを台無しにした田中君を辞めさせることが第一歩です。
(聞き手/本誌発行人 宮嶋巌)