「CM過剰受注」でペナルティ武田TBS社長退陣の暗部

2018年6月号 BUSINESS [インサイド]

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TBSの武田信二社長がこの4月の終わりに、突如、退陣を表明し、関係者の間で驚きが広がっている。在任わずか3年、表向きは「変革の激しいメディア界で、より若い世代の力を活かすため」と、自ら身を引くことによって「世代交代」を加速させる意義を強調しているが、内実は全く異なっているようだ。

実は、TBSの広告収入は今年に入って見通しを数十億円も下回り、主要キー局に差をつけられている。原因は、同社営業局が昨年夏から、放送可能な枠量をはるかに超えるCMを受注し、売り上げに計上しながら、実際は翌月のCM枠で処理する操作を繰り返し、それが昨年末に遂に行き詰まって、大量のCM枠を広告主に返上したことにある。その結果、代理店や広告主から大顰蹙を買い、年明けのCMセールスでペナルティを受け、受注額が急減、好調だった収支も暗転して昨年度の決算は減益に沈んでしまった。

そもそも事の始まりは、「フジテレビが視聴率で自滅した今こそ、CM収入でも追い越せ」という武田社長の檄にあり、そのため、先に記したような度を越したCM受注に同社営業局の一部社員が走るという連鎖があった。武田社長周辺では、このCM過剰受注問題に触れることがご法度となり、表向きは営業局からは一人の処分者も出さなかった。

こうした動きに、まず大手広告代理店サイドから疑問の声があがった。これを聞いた同社の経営幹部も疑念を呈し、一部役員らの造反の動きも出た。このため、経営責任を一応「認識した」形で、決算を前に武田氏が代表権のない会長職に退くことで「幕引き」が図られたが、井上弘名誉会長と石原俊爾会長が揃って辞めることになった経緯は藪の中だ。

武田氏は後継社長に佐々木卓専務を据え、自らは会長としてグループ全体を見据える院政を敷きたいようだが、業績の下方修正の前後で同社の株価が大きく値を下げたことから、このCM問題が一部投資家グループの責任追及の材料になる恐れも。同社には既に一部の外国人投資家グループから、同社保有の優良株、東京エレクトロン株の放出を求める動きがあり、何ともきな臭い。

   

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