股裂き「連合」が「民進・希望」新党を後押し

2018年4月号 POLITICS

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連合の神津里季生会長

民進党が希望の党との新党結成に向け再び動き出した。立憲民主党への合流を目指す「党内左派」を円満に切り離し、希望との合併により衆参両院で第1党を目指す目論見だが、足元では早速、亀裂が露呈している。希望と大筋合意にまで至りながら党内の大反対で統一会派結成に失敗した1月の轍を踏むようなことになれば、執行部の責任論はいよいよ避けられない。

「メーデー前、4月中に新しい政党に生まれ変わりたい」。民進党幹事長の増子輝彦(70)は3月5日の記者会見でこう宣言した。来年春の統一地方選、夏の参院選をにらみ「どんなに遅くとも1年前」には決着をつける構えだ。民進は昨年末、新党結成を含む5項目の「確認事項」を決定。新党への足がかりとして希望との統一会派の結成を目指したが、安住淳(56)ら衆院議員の猛反対に遭い頓挫した。

ならば立憲に合流したい勢力の賛同も得て「円満分党」を図ろうと、代表の大塚耕平(58)や増子の意を受けた桜井充(61)らの参院議員が党内で署名活動を開始。両院議員総会を3月中にも開き、署名を背景に左派の「分派」、民進を存続政党とした希望の吸収合併を決めようと睨む。だが大塚らの思惑通りに事が進むかどうか極めて不透明だ。

「今、希望と合併しても支持率は上がらない。署名したら合併に合意することになるが、本当にいいのか」。既に署名した参院議員に衆院会派「無所属の会」のあるベテランが電話すると、この議員は「そんなつもりではなかった。署名は撤回する」と応じた。統一会派の頓挫は、先の衆院選の「戦犯」細野豪志(46)が離党せずに希望に残ることを聞いた安住らの反乱が直接の要因だが、背景には民進執行部の無所属の会への根回し不足が大きかった。にもかかわらず「失敗の経験が全く生かされていない」(希望幹部)のが実態だ。署名活動の最中、ある参院議員は岡田克也(64)、安住ら民進党籍を持つ衆院議員を指し「あんなやつらは新党にいらない」とぶちまけた。党内の亀裂はますます深まるばかりで、衆院からは「合併を無理やり進めれば総会で否決される。そんな混乱を招けば代表の解任も視野に入れる」との「主戦論」も聞こえてくる。

この時期の合流を模索するのは連合執行部の後押しも大きい。先の衆院選で民進党が3分裂し、宙ぶらりんになっていた連合だが、参院選を1年後に控え、自治労や私鉄総連など旧総評系産別が目下政党支持率の高い立憲側に雪崩を打ち始めている。この動きに対し、旧同盟系が多くを占め、共産党アレルギーの強い連合首脳陣は希望との合流を水面下で支援する。連合の股裂き状態は解消の見込みがなく、新党構想は連合の「代理戦争」の様相を呈す。

「森友学園」への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざん、働き方改革関連法案から裁量労働制を削除する原因となった厚生労働省の不適切データ問題――。安倍政権の根幹を揺るがすレベルの問題が次々に起こる中、党内外からの「野党が力を合わせるべきときにこの有り様では世論の批判は必至だ」(民進党の衆院議員)との声も日に日に増している。大山鳴動してさらなる混乱を印象づける結果に終わっては、もはや目も当てられない。(敬称略)

   

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