2017年10月号 連載
1980年代に海外から帰国した当時、無音ニュースが消え去り、効果音のオンパレードとなっていることに驚いた。事件の当事者はどう感じるだろうと思ったのを覚えている。それから30年、忖度やフェイクニュースなどという言葉が跋扈し、メディアへの信頼も揺らいだ。海外では日本のニュースが扱われることは極めて少なく、国内主要メディアから感じる世界の中の日本の立ち位置と相当ずれがある。「モリ・カケ」だと騒いでいる間に置いていかれるのではないかと危機感を覚える。
海外を深く抉るニュースが少なすぎると思っていた矢先、FACTAのケンブリッジ・アナリティカの記事を読んで驚いた。筆者は英大手新聞でも執筆していて英語圏では読まれているニュースなのだろうが、日本でこんな話を耳にしたことがない。国内にしても編集部による単行本『東芝大裏面史』、各媒体に引用されているが、この事態に至った背景を丁寧に独自取材で追っている。読者に媚びず権力に怯まず読み応えのあるメディアは実に数少なくなってしまった。FACTAには今後も末永く頑張っていただきたいと思う。
翻訳業 長野ゆう