パチスロ「山佐」が後出しジャンケンで大儲け

2017年10月号 BUSINESS

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パチスロ業界の「ドン」が、我田引水の特許を出願し、パチンコ・パチスロ業界の非難を浴びている。ドンとは、言わずと知れた日本電動式遊技機工業協同組合(日電協)の佐野慎一理事長に他ならない。業界筋によれば、佐野氏が代表取締役を務めるパチスロメーカー「山佐」が2年前に出願した特許が、今年6月に登録され、ライバル各社が知るところとなった。

この特許は、平たくいうと「パチスロ台のメーン基板におけるプログラムの使用方法」に関するものだ。パチスロは当たり確率などの規則があるため、当たりを決定するプログラムについて、事細かく規定されている。

ところが近年、不正防止のための対策プログラムなどが増加したため、メーン基板のメモリ不足が顕著になっていた。そこで、日電協は2014年に警察当局と協議を行い、「メモリ不足に対応した新しいプログラムの使用方法」を認めてもらった。現在、メーカー各社が開発中のパチスロの大半は、この新しい規則に沿った開発をしている。問題なのは、その後の山佐の行動だ。日電協が当局と協議して決めた「新しい規制」を、ほぼそのままパクった特許を出願したのだ。言わば「後出しジャンケン」の利権獲得だ。

特許には異議申し立てができるが、認められるとは限らないから、ライバルメーカーは目くじらを立てている。

業界関係者は「この特許を使わないと、パチスロ台の開発は難しい」と口を揃える。もし、山佐の特許が成立すると、ライバル各社は、特許料を支払わなければならなくなる。「警察が認めたルールに準拠した重要な特許だから、使用料は年間数億円になる可能性がある」と、業界関係者は気が気でない。

佐野氏は、本誌16年8月号「パチスロ業界と警察のただならぬ『蜜月』」で報じた通り、パチンコ・パチスロ台の認可や規制を定める警察庁の担当技官と昵懇になり、山佐が所有する特許を使わなければ製造できない新しい規制「役比モニター規制(不正改造等を防止するためのモニターを搭載する規制)」の導入を働きかけた疑いを持たれている。佐野氏と酒食を共にした担当官は国家公務員倫理法に抵触した疑いから左遷されたが、佐野氏はどこ吹く風とばかりに日電協理事長に居座り続けている。山佐の本社がある岡山では、おっかない筋との付き合いが噂されるなど、身ぎれいではない。

ただでさえパチンコ・パチスロ業界は、来年2月から「出玉規制」が強化され、先細りが懸念される。当局の指導により4時間プレイした場合の出玉(獲得メダル)上限を「現状の3分の2程度に減らす」もので、1日に十万円以上稼げるパチスロの魅力が薄れ、愛好者が離れるとの見方もある。さらに、9月開幕の臨時国会に統合型リゾート(IR)実施法案が上程され、東京五輪後に横浜や大阪に「カジノ」が誕生する可能性がある。ある警察庁関係者は「パチンコ・パチスロ業界は依存症対策などで社会的責任を果たしておらず、存在意義があるのか疑問だ」と厳しい見方をしている。

「業界の危機にもかかわらず、自社の利益拡大に走る佐野氏は日電協理事長にふさわしくない」との怨嗟の声が渦巻く。山佐は「後出しジャンケン」で獲得した特許を使って、どれほどカネを稼ぐのだろう。

   

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